第15話 フェーズ2
クソ勇者どもと戦ったことはある俺だが、思えばこういった集団戦は初めてだ。
無機物も含んでいいならたくさんのゴーレムとは戦った経験はあるけど、やはり生身の相手とは迫力が違う。
「コロす、殺してやるぞッ!」
俺の視線の先にいる亜人『バグベア』たちの顔は恐ろしい。俺のことを見るその顔には殺気がこれでもかと溢れている。子どもが見たら寝れなくなってしまうだろう。
「でも逃げるわけにはいかないんだよ」
心を奮い立たせ、敵の群れの中に突っ込んで行く。ここで負けるようならどの道クソ
「いくぞグラム! 合わせろ!」
「……ったく、魔剣使いの荒いご主人様だぜ」
魔剣グラムナイフを右手で握り、その刀身に左手の指を添える。
そしてその黒く光る刀身に術式を打ち込む。
「術式纏刃、
グラムナイフ周りに巨大な青い刀身が出現する。
この刀身に特殊な魔法効果はない。ただ攻撃範囲が広くなり、切れ味が増しただけだ。
それだけにシンプルで無駄がなく――――強い。
「そ……らよっ!」
横なぎに剣を振るうと、目の前にいた三体のバグベアが崩れ落ちる。
「カコめ! 囲んで袋叩きにしろッ!」
続々と俺の周りに集まるバグベアたち。適度に魔法を放ち、逃げ道を確保しつつ
「はは! キリがねえなこりゃ!」
「笑ってる場合かよアルデウス! どーすんだよこれ!」
手の中でグラムが叫ぶ。
「怒る暇があるなら手伝ってくれよ。負けてあいつらに使われるよりはマシだろ?」
「ぐ……確かにあいつらに使われたら包丁にでもされそうだな。……しょうがねえ、こうなったらやってやらあ!
やる気になったグラムは魔法の剣を五本出し、俺の背後に回ろうとしていたバグベアを切り裂く。
こりゃあ楽でいい。
「さて、俺も……ってあいつらも来たか。この調子なら守りきれそうだな」
俺が戦っている間に、
その中にはゴーレムも混じっている。バグベアたちも消耗してるし、この分なら負けることはないだろう。
しかし安心したのも束の間、敵は奥の手を出してきた。
「おい! なんだあれは!?」
そっちに目を移すと、バグベアたちが出てきた穴から巨大な亜人が姿を現した。
「……なんだあいつは」
バグベアによく似ているが、明らかに
遠くて正確な大きさは分からないけど五メートルはありそうだ。筋肉もムキムキだし明らかに強そうだ。
そのクソデカバグベア(仮称)は、近くにいたバグベアを大きな手で掴む。
いったい何をする気なんだ? と思っていると、なんと仲間のはずのソレを思い切り投げつけた!
「おいおいマジかよ!?」
野球の投球のようなフォームで投げられたバグベアはものすごい速さで飛んできて、都市の中に着弾する。
バゴン! と大きな音を立てて着地(着弾?)したバグベアは粉塵舞う中立ち上がると、都市の中で暴れ始める。
「嘘だろ? なんてアナログな真似しやがる!」
こうしてる間にも次々とバグベアたちは投げられ、都市の中に入りこんでしまっている。
非戦闘員は隠れているとはいえマズい。王宮には王女様やラビィもいるんだぞ!
「ここは任せた! 俺は一旦戻る!」
「は、はい! 王女陛下をお願い致します!」
戦場の指揮を騎士団長に任せ、俺は急いで都市に戻るのだった。
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