第14話 伏兵
確かに今までの侵攻は全て防衛されてしまっていた。しかしそれは準備が万端でなかったからであり、自分達の能力が劣っているからではないからと思っていた。
今回バグベアは持てる全戦力を投入するつもりだ。
万が一にも負けることはない、そう族長も
一般兵たちはなぜこうなってしまったのか理解できていなかったが、彼らの族長であるムハンバはそれの原因に気がついていた。
(イマまでの戦いとは士気が違う。原因はあのガキか……!)
ムハンバは開戦前に一人話しかけてきた少年を頭に思い浮かべる。
誰かは検討つかないが、体から滲み出る魔力が彼がただ者ではないことをムハンバに伝えていた。
少なくとも前回までの戦にその少年は姿を見せたことはない。
ならば隠し玉か、それとも外部からの協力者か。いずれにしてもこの状況はマズい。
「ソウ急にあのクソガキを始末せねば……!」
そう決めたムハンバは部下たちを引き連れ戦場を駆け抜ける。
地雷を避け、砲撃を避け、謎のレーザーもギリギリで躱し、宝石都市に近づいていく。
しかしいくら熟練した戦士である彼でも、それらの猛攻を全て避け切ることはかなわない。何度か砲撃を食らい、地雷を踏み抜いてしまう。
しかしそれでも歩みは止まらない。
奪い、穢し、犯す。それこそが彼らの至上の悦び。
それを為すためであるならば、多少の怪我や痛みはスパイスにすらなり得るのだ。
そんなバグベアたちの様子を双眼鏡で確認しながら、アルデウスは呟く。
「おーおー、あんだけ食らっても勢いが落ちないとはやっぱりぶっ飛んでるなあ」
簡単に終わるとは思ってなかったが、バグベアの侵攻速度は思ったより速い。アルデウスは予定を変更し、次の一手を打つ。
「そろそろ次の作戦に出る。用意は出来てるな?」
そう自分の背後に問いかけると「はい!!」と大きな返事が返ってくる。
そこにいたのはたくさんの
しかし勇敢なだけではバグベアに勝つことは出来ない。しかしアルデウスはある方法を取ることで、彼らが戦闘に参加出来るようにしてみせた。
「じゃあ頼んだぞお前たち。今までやられた事をお返ししてやれ!」
アルデウスの言葉に、
準備が出来た彼らは、丸い水晶のような物体を手にし、魔力を流す。
すると近くに待機していた
その数は四十体ほど。水晶を持った
数こそバグベアと比べると少ないが、ゴーレムの体はバグベアより大きく、硬い。その体から放たれる『体当たり』の威力は説明するまでもないだろう。
「……ナンだこいつらは!?」
突然現れたゴーレムに、バグベアたちは困惑する。
そんな彼らにゴーレムたちは問答無用と突進していく。
「オイ! 止まるな!」
「コイつら硬い!!」
「クソ! なんだってんだ!?」
ゴーレムの参戦でバグベアたちの進行の勢いは目に見えて弱まる。それを確認したアルデウスは嬉しそうに笑みを浮かべる。
「どうやらゴーレム作戦も上手くいったみたいだな。良かった良かった」
アルデウスはこの戦いのために、コボルトの村に赴きゴーレムを百体ほど拝借した。
このゴーレムたちは簡単な命令であれば自動でこなしてくれるが、それでは勿体無いと思ったアルデウスは、ゴーレムを
手動で操作することで柔軟に動いてくれるようになり、更に
そのおかげで戦闘能力自体は低い者でも、安全に戦場に貢献することが出来るようになったのだ。
「とは言ってもアレで倒し切るのは無理そうだな。そろそろ俺も準備するか」
アルデウスはそう言うと重い腰を上げ、体を伸ばす。
ゴーレムたちの役割はバグベアたちを倒すことではない。あくまで侵攻速度を遅らせ、砲撃をなるべく多く当てるのが主目的だ。
――――間も無くバグベアたちは砲撃可能距離を越えてしまう。
これ以上近づけば砲撃の爆風が味方にも当たるようになってしまうのだ。
これより始まるは白兵戦。
アルデウスだけでなく、
覚悟こそ決まってはいるが、その顔にはまだ恐れが見て取れる。それを感じ取ったアルデウスは大声で彼らに声をかける。
「安心しろ! 敵の数は半分以下にまで減ってる! お前らの力を見せてやれ!」
そう
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