第4話 包囲網
謎の小動物を追い、俺は夜の王都を疾走する。
小動物は中々の脚力を持っていて、時に路地を抜け、時に壁を駆け上がり、時に高く跳びあがり屋根に飛び乗ったりと縦横無尽に逃走する。
「ぴぃっ!? まだ追ってますわ!?」
そしておまけに喋る。喋ることが出来る獣は珍しい。
もしカーバンクルじゃなかったとしても、ぜひ手に入れて調べ倒したい。
「おい待てよ!」
「いやですぅー!」
小動物は泣きわめきながら逃げるのをやめない。こりゃ口で言って止めるのは無理そうだな。
だったら、
「
「ぴぃ!?」
地面から土の壁を生やし、進路を塞ぐ。すると小動物は進路を変え違う道に入る。
「よし……!」
その後も追っては壁を出現させ、進路を変えていく。それを見たグラムは疑問を持ったのか尋ねてくる。
「いったい何してんだ?」
「まあ見てろって」
俺と小動物はしばらく追いかけっこを続ける。
ただ俺も馬鹿みたいに追っているだけじゃあない。既に捕まえるまでの式は頭に出来上がっている。
「
再び小動物の進路を塞ぐ。
流石に慣れたのか小動物は地面が盛り上がるとすぐにカーブし近くの細い道に入り込んでいく。そして……
「ぴ、ぴいぃ!?」
その先に張り巡らせていた蜘蛛の巣の形状をした『糸』に引っかかる。
くく、作戦通りにいったな。
「
「ぴいいいいぃ!!!! 離してくださいいいぃぃっ!!」
「おい、あんまり暴れると」
「糸が! 糸が絡まりますぅ! 食べられちゃいますっ!!」
「あーあー暴れるから……」
自ら糸にぐるぐる巻きになる小動物を俺は救出する。
しかし逃げられても困るのでちゃんと硬い糸で縛り上げるのを忘れない。
「き、きさま! 私を縛り上げてなんのつもりですか!?」
白くてモフモフの小動物は縛り上げられた状態で俺を怒鳴りつける。
兎と犬を足したような生き物だな。足は短くて耳が長い、見たことがない面白い見た目だ。
しかしそれよりも目を引く特徴がある。
それは額に輝く赤い宝石。間違いない、こいつがカーバンクルだ。
「乱暴するつもりはない。少し話を……」
「ぴいいいいいい! 誰か助けてくださいいっ!! モフられる! 私の白く美しい毛を汚されてしまいますうぅぅぅ!!!!!」
「少し黙れっ!」
「ぴぃ!?」
やかましいカーバンクルの口を糸でぐるぐる巻きにして黙らせる。
こんな夜中に大声を出したら人が来てしまうじゃないか。
今の俺は控えめに見て動物を虐待する畜生。こんな姿見られたらおしまいだ。
「いいか、静かにしろ。質問に答えたら無傷で返す」
「――――もがもが!!」
カーバンクルは涙目になりながらコクコクと頷く。
まだ信用ならないけど、このまま進展しないと困るので口の糸を緩める。
「――――ぷはっ! 何ですのあなたは! 私を誰だと思っているのですか!」
「誰って、カーバンクルだろ?」
「そうですが! 私はただのカーバンクルではありませんわ! 私は女王陛下の命を受け、宝石都市『ジェムシュタット』よりこの国に、選ばれし者を探しに来た使者なのです! えへん!」
そう言ってカーバンクルは偉そうに胸を張る。どうやらただの迷いカーバンクルじゃないようだな。
それにしても……面白い単語が出てきたな。
宝石都市『ジェムシュタット』だって? それはおとぎ話に出てくる伝説の国じゃないか。
建物全てが宝石で出来た幻の都。少年がそこを訪れて冒険する話を、小さい頃よくネムママにベッドで聞かせて貰ったものだ。懐かしい。
俺は
「おいカーバンクル」
「ちょっと! レディにそんな呼び方は失礼ですわよ! 私にはラビィット・ルビリアナ・ジェマ・ル・カルバンシェットという立派な名前がありましてよ!」
「……長いな。ラビィでいいか?」
「よくってよ!」
意外と物分かりがいいな。
少し話したことで落ち着いたみたいだし、糸も解いて大丈夫か。俺は逃げないよう、注意を払いつつ糸を解く。
「あら? 解いてくださるのですか? もしかしてあなたいい人ですわ?」
「……お前が悪い人に騙されないか俺は心配だよ」
カーバンクルってのはみんなこうなのか?
少し不安を覚えながら俺がカーバンクルの少女? ラビィと話し始めるのだった。
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