トマトスープと、ふわふわパン

 ……台所から、おいしそうなにおいがする。ぼくはぱっちり目を覚まして、となりで寝ていたココを起こした。お兄ちゃんが、ご飯をつくってくれたんだ。

「ルカ、おはよう。ココと遊びすぎて、疲れたんだな」

 優しい優しいぼくのお兄ちゃんは、大きなおなべをぐるぐるかき回している。このスープは……、間違いなく、トマトスープだ!

「お兄ちゃん! 今日の夕飯は、トマトスープだね!」

「ぴんぽーん、正解! ルカの好きな玉ねぎと、とろりと溶けたチーズも入っているよ」

 お兄ちゃんは山型パンを取り出して、ぼくとココの分を切ってくれる。ぼくはいい子にお座りをしたココに、ふわふわのパンを食べさせてあげた。

「ルカ、牛乳を注いで。それと、スプーンの用意も」

「うん! ぼくと、お兄ちゃんの分!」

 ぼくのお父さんは、ぼくが生まれてすぐに、兵隊さんになった。ぼくのお母さんは、いつもお仕事が忙しくて、お月さまが高くなるまで帰ってこない。だけど、ぼくは全然、さみしくないよ。大好きなお兄ちゃんと、ふわふわもさもさのココが、いつも一緒にいてくれるから。

「あつっ、あつっ……! おいしいけど、あつい!」

「こらこら、ちゃんとふーふーしないと」

 お兄ちゃんはくすくす笑いながら、ぼくのほっぺたについたトマトスープを、優しくふき取ってくれる。ぼくはうれしくなって、スプーンで玉ねぎをすくって食べた。

「ねぇ、お兄ちゃん! 明日はさ、お兄ちゃんも一緒に遊ぼうよ! お庭のたんぽぽをつんで、ボールの投げ合いっこしよう!」

「そうだな。約束しよう」

 ぼくとお兄ちゃんは、二人だけの約束のポーズをする。明日はお兄ちゃんと遊べる。とってもとっても楽しみだ。

「さぁ、ルカ。スープを食べ終わったら、ちゃんと口をゆすいで、それからベッドに入るんだぞ。お兄ちゃんは、ご飯の片づけをするから」

「うん。おやすみ、お兄ちゃん」

「ああ、おやすみ」

 ぼくはお兄ちゃんとおやすみのキスをして、冷たい水で口をゆすいだ。それからココと一緒にベッドに入って、昨日の夢のつづきを見た……。

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