第4話:ちょっと前、魔王復活


 ―― 其は膨大ぼうだいな魔力を有し数多あまたの魔物を従える ――



 先代の女帝であった女魔王は先の勇者にドッキューン一目惚れして「私、普通の女の子に戻ります! 勇者様ので幸せにしてぇ! 子供は三人欲しいわ、うふふふふっ!」とか言って出奔しゅっぽんした。


 それより幾多いくた残務処理めんどう事をさせられたバトゥルス将軍は涙に感むせていた。



 「おおっ! 魔王様の復活にございます!」


 「いやさぁ、なんで僕が魔王なのよ? と言うかこの胸当てブラジャー取れないんだけど?」



 ずれた眼鏡を中指で戻し、四十を過ぎた頭の毛が寂しいハ ゲ、たぬき腹でボンテージ姿の魔王の胸には「D」カップの女ものの胸当てブラジャーがついていた。


 街の繁華街の裏通りにあるの常連客であった彼は、店が手に入れたとする珍しい胸当てブラジャーを装着したと同時に膨大ぼうだいな魔力に目覚めた。



 『あの頃独身時代は良かったわぁ…… やっぱ世界征服安定基盤確保しておくべきだったわぁ……』



 彼はそんな疲れたくたびれた女の声を聴くと同時にその怨念に憑かれ魔王として目覚めた。

 それが現魔王。



 ―― 其は膨大ぼうだいな魔力を有し数多あまたの魔物を従えるおっさん変態魔王! ――



 その胸には栄光独身時代を懐かしむ先代の怨念が染みついた女ものの胸当てブラジャー燦然さんぜんと輝いていたのだった。



 「ん、じゃぁとりあえず世界征服してね。あと配下の者は全員網タイツ着用ね!」


 「御意!」




 こうしてバトゥルス将軍はまず自分からその網タイツ聖衣を身に着けるのだった。

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