第二二部「冷たい命」第3話 (修正版)
全国的に見ても
その歴史は長く、室町時代にすでにその名前は全国に響いているほどだった。
しかしその歴史は、
現在の当主は
その時に
そして同時に、
権力が欲しかった。
もはやそれには
そのための模索をしていた矢先、
奥深くに隠されるように仕舞われていたその文献は、
そしてそれは
しばらくの間、その内容は
あまりにも大きなその現実。
そして、
──……最後の
日々、
そしてそれは、
その
全国に名の知れた神社だけに、風格すら感じられる。
その鳥居の先には広大な土地。
中心にある巨大な本殿。
そこまでまっすぐ続く石畳。その周囲には細かな玉砂利が敷き詰められている。それは見事なまでに整地されていた。かなりの人手が掛かるものだろう。
しかし前回ここで待ち構えていたのは
二人は
しかも
──……何があるのかは分からない…………
そう思った
物理的に
──…………未来が見えない……誰かが邪魔をしてる…………
そんな不安を抱えた
「……幻みたいなもの…………」
その
「神社も宗教も……所詮は人が作ったもの…………
──……まったく……だからいつも驚かされる…………
そう思った
「……面白いね……私たちは幻の中で生きてる……」
「幻なら…………好きに暴れようか」
「そうね」
お互いに本殿に視線を向けたまま。しかし周囲の状況は見えていた。総てが手に取るように理解出来た。
左右に一〇名ずつ。
「ご大層な出迎えだねえ。どうせあなたたちは
そして抑えた声で続ける。
「黙って本殿に案内しな」
すると、左右の男たちが参道に沿って列を成していく。それでも
しだいに近付いてくる本殿は久しぶりということもあってか、以前来た時より大きく見えた。
板戸は大きく開け放たれ、中心には大きなしめ縄が下がり、その下には賽銭箱。通常であれば参拝客がいてもおかしくない大きな神社。しかし現在はその参拝客はどこにもいない。
本殿の奥の影の中に巨大な祭壇。
その祭壇に炎が揺れ、まるでその炎が空気を揺らす。
すでに空はだいぶ暗い時間。
暗く沈んだ祭壇前に、人影が一つ。
紫の
参道を歩く男たちが本殿の直前で立ち止まり、腰を落として片膝を着いた。
すぐに
祭壇前の紫の人影が、一歩だけ前へ。
低い、
「お待ちいたしておりました……
「……御上がり下さい」
その声に、二人は左右の男たちの間を歩いて階段を登った。板間の前で靴を脱ごうとした時、再び声が掛かる。
「
二人が黙って従うと、紫の男は祭壇を背に両膝を落とし、正座をしたまま深々と頭を下げた。
──……何かが見えてる…………?
二人の靴音が響く中、男の声がそれを消す。
「
それにすぐに返したのは
「あなたが
そして分厚い紫の座布団に
男も頭を下げたまますぐに応える。
「
その
続いて口を開くのは
「突然にも関わらず迎え入れていただき感謝いたします」
「いえいえ……この世界に長くおりますと色々と勘が鋭くなるものですよ」
微かに
「今日はお聞きしたいことがあって来ました」
「なんなりと……その御用向きとは……?」
「ここは
──……この男には〝
小さく、雨の音が聞こえ始めた。細かく、この時期にしてはやけに湿り気を帯びたその雨は、本殿の中の三人に少しずつ絡まっていく。
その空気の中で、しばらく
そしてゆっくりと口を開く。
「いいでしょう……本日は世継ぎでもある息子たちも人払いをしております。私としましても本日は大事な日になることは承知していた事……そして
その表情は、鋭くも、どこか自信に満ちている。
「……
雨の音が大きくなってきた。
──……そういうことか…………
「それを私たちが信じられる保証は?」
迷いの無い声だった。
その声は、瞬時に
「……元々ここが
表紙には何も書かれてはいない。それほど厚くはないが、今にも崩れそうなほどに古い物であることは分かった。
それは
今、この総てを〝必然〟であると思いたかった。
祭壇からの炎の揺らぎだけが辺りを照らす中で、その文献も怪しく揺れる。
その中に〝真実〟がある。
それを雨の音が隠そうとしていた。
☆
新たに
他には何も感じることが出来ないままに
頭の中に見えるのは
そして度々浮かぶ
──……様子を伺っているのか…………
しかしこの場所が見付かるはずはない。
いつもの
──……私なんて…………
そんな考えも時々顔を出す。
いつも虚勢を張っていたのかもしれない。少なくともそうして生きてきたのだろう。無意識の内に染み付いた生き方。それに自分で気が付いた時、あまりにもそれは脆く簡単に崩れていく。
しかし、どこかに自分を信じたい気持ちもある。
それは
引き返せないことは最初から分かっていたこと。どんな終わり方になるのか、それだけはなぜか
過去と今、それは未来と同時に存在している────それが全員の一致した考え方だった。
だからこそ過去だけでなく未来をも見ることが出来る。しかしならばなぜ未来だけが変動の可能性を含んでいるのか、それだけは誰にも分からなかった。時を超えることの出来る
すでに暗くなった
その
その音に
「────
──…………来た……
「まったく、面倒な
虚勢を張った自分のそんな言葉に嫌気がさしながらも、
「チャンネルはそのまま……私を
その
その背後には長女の
どうやら中心になっているのは
そして
『
「へー、今まで野放しだったの?」
『やめろ
「ふーん、小さい頃からずっと私を恐れて嫉妬してきた
──……落ち着け…………感情的になるな…………
そう思った
それは今までに感じたことのないもの。違和感と言ってもいいだろう。
──……流されるな…………絶対に誰も犠牲になんかしない…………
その
『
「何度もぶつかってきた相手に向かってよく言える」
──…………本当の敵……? 何のことだ…………?
何かがおかしい。
少なくとも
「血の繋がりなんて興味はない……もっと深いものを見てきた……血筋に寄りかかってきた姉さんたちとは違うよ」
突然、空気の熱量が変わる。
──…………?
そこに
『
──………………!
無意識に
背後からの強力な気配に振り返っていた。
そして叫ぶ。
「
背後にはまるで寄り添うように立つ
背中を丸め、頭を
そこからまっすぐに────
小さく震える
体温が急激に冷えていくのを感じた。
しかし中心だけが熱い。
その背後から聞こえるのは、
「…………頂点に立つのはあなたではない…………
立てられていた刃が
その横で、
一筋の涙を
「…………私です…………」
そして、短刀を真横に
その
その
──…………やはり…………覚えていたか…………
そして
「────切って‼︎」
雨音が戻る。
それでも、静かだった。
全身から汗が吹き出した。
──……絶対に誰も犠牲にしない…………
そう思った
☆
当主への正式な引き継ぎの
夏の強い夕陽が入り込む本殿。
改めて
仮にも古くから
歴代の
しかしその歴史の真実の一端を、
「先日は大義であった。これからも
「ありがたき幸せにございます」
「
「はい……
「そうですか……
「……
その
「その一番の勢力を誇る
「…………はい」
「心配は入りませんよ。
──……そういう……ことか…………
そのシステムによって
それが現実だった。
それでも驚くと同時に、
「そして
その
次の
「これは異例のことでありますが……
「
まだ世継ぎが産まれていないのならば、様子を見てもいいはず。これからであるにも関わらず、なぜいきなりなのか。
「それで良い……まだ
──……どこから来た子なのか……
「先ほど私は異例なことであると言いました…………
そこには
「数日前、
──……そんなことが…………
「
断れるはずがない。
名を〝
「かなざくらの古屋敷」
〜 第二二部「冷たい命」第4話へつづく 〜
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