もしもあの時②

『……もしもし』

 彼女の声を聞いたのは、約二年ぶりのことだ。

 最後に話した時と比べると、音吐朗朗としていて大人っぽく感じた。まぁ元から質実剛健な子だったけどね。


 だがしかしだ。


 人生って何が起きるか、わからないものだ。

 一年前、僕は彼女に話しかけることができなかった――逃げたんだ。

 そんな僕が今、彼女と電話をしているなんて……。ちょっとは成長できたのだろうか?


『声変わり、したよね?』

「そう……やね」

『ははは、違う人みたい』


 リビングにいる親に聞かれないようにトーンを下げているから、余計にそう思うのかもしれない。

『ねね、高校はどこ受験するの?』

 あと三ヶ月もすれば、受験シーズンになる。

 だから、話題はそのことだった――。


 僕は「◯◯高校」と答え、

『あ、そうなん!?』

 わりと高いトーンで返ってきた。


 すると、

『もしかしたら私も◯◯高校かも……』

「え」

 驚いた。

 なぜなら、彼女は中高一貫制の学校に行っていたからだ。そのままエレベーター式に、と思っていたから「まさか」って感じだった。

 でも同時に、高校は一緒になるかもしれないってだけで、気持ちが舞い上がった。


 何はともあれ、まずは高校受験。

 僕は必死に勉強した。

 一緒になる、なれないにしろ、◯◯高校には受からなければいけない、と強く思った。




※※※




 そして月日が経ち――三月。合否発表の日。

 僕は無事に◯◯高校に合格した。

 そして、彼女に連絡を取った。


 しかしこの時、電話は繋がらなかった。

 だから、僕は急いでメールを打った。


 まだか、まだか、とそわそわする。


 そして「ピロン」と携帯が鳴った。

 ――急いで確認する。


 だが、返ってきたメールには◯◯高校の文字はなかった。


 また、一緒にはなれなかった。



 それでも。

 それでも、会いに行けばいいじゃないか!



 だけど、当時の僕はその選択を取らなかった。



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