第3話 女やもめに花が咲く?……咲かんわい
母と私のふたり生活が始まった。私は大学を卒業して、とある小さな会社に就職する。超氷河期といわれた時代に、まあ百社を超える会社に願書を送り、お祈りします手紙を貰いまくり、卒業旅行にも行かず、バリバリ活動した。女子大四年制、新設校、都内じゃない、というハンディを振り切って、何とか内定をもぎ取った。
部屋が荒れ始めたのはこの頃か。
最初は、洗濯済みの衣服を蟻塚のように積み上げるという荒業から始まった。それでも、アイロンがけの必要なものは、ピッチリとアイロンをかける。靴下は同じもの同士ちゃんと組む。そこら辺はまあ、きちんとしていた。
それでも、部屋のあちこちに蟻塚があるのはよろしくない、と、母がタンスを買ってきた。空のタンスが二棹あるのに。この辺が、母の分からないところだ。それだけでは物足りなかったのか、めちゃ掛けラウンドハンガー、のようなものも買ってくる。畳半分のスペースで100着掛けられます!みたいな売り文句に財布の口がぱかぱか開いてしまう。確かにハンガーは半畳で済んだ。だが、そこにめちゃ掛けるとあっさり一畳取られるのだ。しかも、めちゃ掛けすると重くて回らない。そのうち、ベアリングがバカになって回らなくなる。でかいクリスマスツリーが年中部屋にあるようなものだ。蟻塚も見ようによってはミニミニクリスマスツリーだ。
かくして、年中我が家はクリスマス気分のご陽気な家になりつつあった。女やもめに花は咲かなかったが、ツリーが林立した。何か違わないか。
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