第2話 まず、弟が壊れていく

 私よりふたつ下の弟は、小さい頃はそれはそれは可愛かったが、中学生くらいから反抗期が始まった。その反抗期は未だ続いている。

 高校生の時に、近所の金持ちの友達の家の離れに入り浸るようになる。なんと、遅刻が年間百回を軽く超えた。姉の私は全く遅刻をしないのに、弟は三時間目くらいからの大名出席だ。


 父はこの頃あまり家に帰ってこなくなり、帰ってきたときだけ家の中がぴりついたのを覚えている。


 弟の通っていた学校は、中堅どころのまあ、真面目に通っていればどこかしら大学には行ける、ような学校だった。

 かわって私の通っていた学校は、いわゆる底辺校で、名前が漢字で書ければ卒業できるといわれていた。四年制大学に進学するものは、片手で足りた。


なのに。


 底辺校の私が、予備校にも行かず一発で四年制大学に受かる。片手に仲間入りしたわけだ。

 それを見ていた弟は、受験楽勝、と勘違いしてしまう。

 成績は悪いが、教師に好かれるタイプで要領がメチャクチャいい私と、成績も出欠席グダグダで、教師に嫌われるタイプで、要領の悪すぎる弟では、違うのだ。全く違うのだ。


 それに弟は気づかないまま、受験を迎える。予備校にも行っていた。結果、全滅。

 この頃はもう父が家にいなかったので、母が働いて願書代や受験料を稼ぎだしていた。何十校単位で受けるので、その金額はバカにならない。バカなのは弟だ。


 結局、二浪までしてどこにも引っ掛からずに、かすりもせずに弟の受験は終わった。そしてありがちだが専門学校に進んだ。

 専門学校でまた青春をエンジョイしてしまった弟は、公務員試験の中で、ようやっと刑務官と郵便局外務だけに辛うじて引っ掛かる。氣の弱い弟は周りの予想通りに、郵便局外務に進む。俗に言う、外でよく見る郵便屋さんだ。仕事はきついが楽しいらしかった。が、朝が早いので朝帰りどころが帰らずにそのまま出勤というのも少なくない。


 しばらくして、その長距離通勤がキツくなったのと、多分、私への敗北感で、弟は家を出る。郵便局は官舎があるので助かった。


 かくして、我が愛しき機能不全家族は、バラバラになったのだ。

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