第27話 白煙
「あー…あとなんだっけ?そうだそうだ、報告書だ」
いつもの仕事、いつもの痛み、いつもの殺し。
身体から湧き上がる痛みと染み付く血の匂い。
そして、いつもの仕草で咥えた煙草の味。
「最近どんどん仕事増えてきてやがる、ったく物騒な世の中だよ、なあ?」
「まるで仕事ができるやつの口振りだな、ほとんどなんにもしてないくせによ」
「んなこと言うなよ!俺だって頑張ってんだよ!」
「どうだか」
「だいたいなあ、お前が喧嘩っ早すぎるんだよ、相手の情報聞き出す前に殺しちまっちゃあ意味ないだろうが、なあ、お前」
「一人前に太刀打ちできるようになってから小言は言えよ」
「本当にお前は、そういう」
「…ここで吸ったら怒られるんじゃないか」
興味のなさそうなバディの視線を辿ると、冷たいコンクリートに打ち付けられたのはデカデカと「禁煙」の看板。荒んだスプレーアートがそれに精一杯対抗するかのように散っている。
「あー…ああ……」
「忙しいから俺はもういくぞ。警察沙汰になったら後で笑ってやるよ」
猫のような逃げ足の素早さだ。先端だけ煤けてしまった煙草をみつめ、口に含んでいた残りの白煙を空気に溶く。
「まったく、どこもかしこも、息がしにくい世の中だよなあ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます