第27話 白煙

「あー…あとなんだっけ?そうだそうだ、報告書だ」


いつもの仕事、いつもの痛み、いつもの殺し。

身体から湧き上がる痛みと染み付く血の匂い。

そして、いつもの仕草で咥えた煙草の味。


「最近どんどん仕事増えてきてやがる、ったく物騒な世の中だよ、なあ?」

「まるで仕事ができるやつの口振りだな、ほとんどなんにもしてないくせによ」

「んなこと言うなよ!俺だって頑張ってんだよ!」

「どうだか」

「だいたいなあ、お前が喧嘩っ早すぎるんだよ、相手の情報聞き出す前に殺しちまっちゃあ意味ないだろうが、なあ、お前」

「一人前に太刀打ちできるようになってから小言は言えよ」

「本当にお前は、そういう」

「…ここで吸ったら怒られるんじゃないか」


興味のなさそうなバディの視線を辿ると、冷たいコンクリートに打ち付けられたのはデカデカと「禁煙」の看板。荒んだスプレーアートがそれに精一杯対抗するかのように散っている。


「あー…ああ……」

「忙しいから俺はもういくぞ。警察沙汰になったら後で笑ってやるよ」


猫のような逃げ足の素早さだ。先端だけ煤けてしまった煙草をみつめ、口に含んでいた残りの白煙を空気に溶く。


「まったく、どこもかしこも、息がしにくい世の中だよなあ」

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