第21話 大きさ
はじめは電子的な存在のままで数年間。解像度があがったそれは、次に豆粒のような存在へ変わった。豆粒のような笑顔は、驚くほど小さいのに、驚くほど確かにそこにいて、驚くほど声が届いて、驚くほど心臓が揺れて、そして驚くほど涙腺を緩ませてくれた。
その大きさで目に見えるということが夢であり同時に現実だった。自分のなかであれほど大きかったあなたが、こんなに小さな存在だとは思わなかった。信じたくなかった。
もっと近く、そう願った。
もっと見て、そう願った。
もっとあなたを見ていたい。何度も何度も願い続け月を見送る日々。
皮肉なことに画面越しのあなたのほうが近くに見えたし、それどころかブラウン管が発する熱が体温のように感じられた。触れてもいないのに抱かれているような気持ちで静電気に包まれていた。
赤と緑と青のノイズの走る花束を抱いて眠る。
いつかノイズの走らない本当の太陽をいつかこの手に抱けますように。そう願って生きてきたんだ。そう願って心臓を動かし続けてきたんだ。
だから、こんなふうに人間みたいな大きさで突然腕を広げられては、困ってしまうよ。
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