第15話 相談室1

「私は利用されるのは嫌なのです。でも孤独になるのも嫌なのです。いい子でいれば孤独にならずにすみますが利用されます。いい子でいるのをやめれば私は自分のために生きられて孤独になってしまう。実際に自分らしく物事を話すようになってから友達が減っていくのです。先生、どちらを選んだらいいでしょう」


「思いというものには消費期限がある。人への感情も己の価値観にもだ。君が必死で取り繕っている都合のいい人間を辞めれば、多くの人が離れていくだろう。それはつまり周囲は君のことを都合のいいコマとして評価していたということだ。まあそんなことはわざわざ聞かなくても君ならとうに理解しているだろうに。そして周囲から向けられていた思いの消費期限よりも、君の意思が取り扱いづらく苦味をもつようになったから「賞味期限」のほうがきれていったのだ」


「私はもう愛されない人間ですか」


「それは君次第だろう。ただ飛び降りるなら別の建物にしてくれよ。厄介ごとは御免なんだ」

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