第39話 二度目のプロローグ 〜再び始まる俺の修羅ライフ〜
気温と湿度、共に良好。
見渡す限り視界に広がるのは、煌びやかな陽光を反射する広大な
まるで世界の果てまで広がっていそうなそれは、大海などではなく、日本最大の大きさを誇る湖だ。
そんな雄大かつ
……いや、正確に言うと自分を含む男二人と
女性一人が。
俺とは学年も違えば容姿もケタ違いに整っている男女が、自分を挟んで何やら意味深な表情で見つめ合っているではないか。
「もう一度聞くけれど……本当にその子が君の彼氏なのか?」
女の子ならその声と表情だけで誰もが虜になるであろう色気を漂わせながら、目の前にいる男が言う。
ちなみにこちらの男前、今回の合宿の主催者であり、我が校の生徒会で副会長も務めるというかなりの実力者らしい。
何やら雲行きが怪しくなってきた展開に、俺はさっと視線を逸らすと、代わりに晴れ渡った空を見上げた。
まるで宇宙まで突き抜けそうなほど澄み切った青空を瞳に映せば、気分はまさに燦々デイズ。
こんな気持ちの良い日にはやっぱアニソンだよなー、などとさっそく得意の現実逃避を発動していると、今度は隣に立つ女性の声が耳を打つ。
「だからそうやって何度も言ってるやんッ」
甘いフェイス男の発言もなんのその。
芯の強さが通った声音と態度でそう言い返すのは、赤茶色の髪を靡かせる美しい女性だ。
くっきりとした大きな猫目に、俺なんかよりもはるかに小さな顔のライン。
そしてモデルのような均整の取れたその身体は、出るところはしっかりと出ていて、つい二度見をしてしまうレベル。
そんな彼女の姿にチラチラと気を取られていたら、こちらを振り向き「ねっ」と太陽みたいにニコリと笑った彼女が、あろうことか俺の右腕にぎゅっとしがみついてきたではないか。
その瞬間、マシュマロみたいにむにゅっとした柔らかくてとろけそうな感覚が俺の腕と心を掴む。
すでに経験済みとはいえ、この人のこの感覚に慣れる日はきっとこの先もこないだろう。
なんてことを一人思いながら目の前を見れば、動揺を隠しきれないのか、愕然とした表情を浮かべながら俺のこと見つめてくる男。
「君はいったい……」
名前も知らなければおそらく顔も知らなかったであろうモブな相手に、自分の想い人を取られて今度は敵意を滲ませてくる相手。
けれどもモブとはいえ、俺も
一度守り抜くと決めた女性の前で狼狽えるようなやわな奴ではない。
なのでここは先輩相手とはいえキリッとした目つきで目の前の相手を睨み返すと、俺は力強く唇を開く。
「俺は
――
風と共に駆け抜けたのは、羞恥が詰まった沈黙。
肝心なところで二度も噛んでしまったことは、いつものご愛嬌。
そしてそんな俺が送る修羅な生活については、いつものようにご静聴。
気まずい、場違い、理解できない。
今日も我が身に降り注ぐ奇怪で奇妙な三拍子が揃ったところで、いつか叫んだことがあるセリフをもう一度。
あぁもうっ、どうしてこうなったッ⁉︎
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