第25話 裏裏裏・サービス回……からの企み。

 作戦は、完璧やった。


 ちゃぷんとした音が響くお風呂場で、ウチこと神嶋かみしま心晴こはるは湯船に浸かりながら一人にやりと笑みを浮かべる。


「あや姉はほんまわかりやすいなぁ」


 先ほどの晩御飯での出来事を思い出し、ウチは満足げにそんな言葉を呟く。

 この前の時もそうやったけど、あや姉はまさ兄のことになるといつもムキになって噛みついてくる。それがわかりやすいのなんのって、今日は恋愛の話題をネタに仕掛けることができたので結果は思った通りやった。


「まあこの調子やったらウチの計画がうまいこといくのも時間の問題やな」


 早くもそんな勝利宣言をしたウチは、湯船から両腕を出して「う〜んっ」と伸びをする。高くあげた手首から水滴がすーっと小麦色の肌を撫でるように落ちてきて、最後は自慢のふっくらとしたおっぱいの谷間へと吸い込まれて消えていく。

 再びぽしゃんと湯船に腕をつけたウチは、「さてさて」と一人呟きながら今後の作戦を練る。


 家にいる時は何かと口ケンカすることの多いまさ兄とあや姉やけど、そのくせ好みは結構似ていることが多かったりするあの二人。聞いてる音楽とか、好きなお菓子とか。

 それにケンカしてない時は阿吽あうんの呼吸というか、はたから見てるとカップルを通り越してもう夫婦みたいに見える時もあるぐらいや。


「それにまさ兄はまさ兄で、いつまで経っても女の子に免疫できひんし」


 わざとらしく呆れた口調でそう言うと、ウチら姉妹のプライベートを前にしていつもドギマギしているまさ兄のことを思い出し、ぷっと吹き出してしまう。

 普段ウチがわざとくっついたり抱きついたりしておちょくったら、『小娘が生意気に』ってクールぶるくせに、反応するところはちゃっかり反応してんのを実は知ってる。……まあさすがにウチも恥ずかしいからそこんとこ触れへんけど。


「だからあや姉も強引にいったらぜったいイケると思うんやけどなぁ」


 同じくこういったところだけは何故か奥手な相手に向かって、そんな言葉を送るウチ。

 それに今日わかったことやけど、あや姉はまだ付き合ったことがないらしい。

 だったらその初めてをぜんぶまさ兄にあげるお手伝いをしてあげんのも、恋のキューピットである妹の役目。

 そんなことを考えて一人ニヤニヤとしていた時、ふと気になっていたことがあったのを思い出す。


「そういや……まり姉はどうやったんやろ?」


 夕食時、あや姉の本音を探り出す為に仕掛けた質問を、そのまま流れでまり姉にも聞いたけど、結局答えはわからんままやった。

 まあまり姉はもう高校3年生やし、お世辞抜きでウチから見ても綺麗なおねーちゃんなので、付き合った経験ぐらいいくらでもあるのかもしれへん。

 それに、もしかしたらこっそりともう大人の階段登ってもうてるかもしれんしな。


「うーん……」と眉間に皺を寄せながらそんなこと考えていたウチだったが、今はそれよりもあや姉とまさ兄のことが最優先事項だということを思い出して再び意識を切り替える。

 そしてすでに水面下で進めている計画のことを考えて、思わずニヤっと笑みが溢れた。


「にししっ、明後日が楽しみやなっ」

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