第22話 裏裏・それでも日常はやってくる。
あたしこと
「何なのアイツ……」
チラリと視線を向けた先には、クラスメイトに声を掛けられたぐらいでドギマギしている
そしてそんな彼に話しかけているのは、クラスでも癒し系キャラとして人気がある
いつも挙動不審で情けない将門のことを見ていると、家でも学校でも無性に腹が立ってしまう。
特に昨夜なんてほんとにありえなかった。
そんなことを思い出してしまった私は、周りにいる友達との話しは片耳で聞きながら、さっきから朋美ちゃんと話しをしている将門のことをちらちらと盗み見る。
将門とは幼稚園や小学校どころか、産まれた病院だって同じだった。
世の中には『腐れ縁』という言葉があるけれど、それはきっと自分たちのような関係のことを言うのだろう。
三姉妹の中でも同い年ということもあってか、物心ついた頃にはアイツはあたしの世界に当たり前のようにいて、いつも何をするのにも一緒だった。
その時からすでにどんくさくて情けなくてそして怖がりで、同い年なのにあたしのほうが何かと世話を焼いていた記憶ばっかりが今でも残っている。
けれどもそのくせあたし達姉妹が困っている時は、必ず最初に手を差し出してくれていたのもアイツだった。
そう……あたしの時だっていつも。
「なあ朱華、朋美のやつ上手いこといくと思う?」
「え?」
不意に話しを振られてしまい、あたしは慌てて視線を戻す。
「ま、まあ朋美ちゃんだったら大丈夫じゃない?」
「ふーん……」
そんな声を漏らし、なぜか肝心の朋美ちゃんの方ではなく、あたしのことをじっと見つめてくるのは
こちらもいつも一緒にいる友達だ。
あたしよりも少し背が高くてメイクもばっちりで、長い髪の毛を派手な茶髪にしている彼女の見た目は完全に浪花育ちのギャルっ子。
だから最初会った時はちょっと怖かったけれど、話してみると友達想いで気遣いもできる良い子だと知ってからは、今では一番仲良しの友達だ。
「
「ッ⁉」
突然そんなことを言ってニヤニヤとした笑みを浮かべる紗季のことを、あたしは思わず「は?」とつい睨み返してしまう。
「なんであたしが将……萩野なんかに声をかけないといけないのよ」
普段友達と話すときには出さないような嫌悪感を丸出しにしながら、あたしはすぐに言葉を返した。
するとそんな自分を見て、なぜかケラケラと笑い声をあげる紗季。
「それそれ、それやって。朱華って萩野くんのことになると今みたいにいつも必死になるやん」
「……」
話しをやめるどころか、アハハっと声をあげながらさらにからかってくる紗季。そのせいで周りにいる友達もクスクスと笑い声を漏らしているではないか。
こうなってしまっては何を言っても無駄なことはわかっているので、あたしは顔を熱くしまま小さくため息をつく。
本当はアイツと関りがあるということは卒業するまで、いや卒業してからもこの学校の友達には隠し通したかったのだけれど、不覚にも自分のミスで幼馴染みだとバレてしまってからはいつもこんな調子だ。
いやあれはあたしのせいじゃなくてあんなところでジュースをぶちまけた将門の方が悪い、と心の中で大きく頷いていると、再び紗季が言う。
「それにしてもホンマ羨ましいわ。幼馴染の男の子と運命みたいに大阪の学校で再会して一緒に青春送れるとか」
「あのね紗季……何度も言ってるけど、あたしとアイツはそんな関係じゃないからっ」
いつになく将門のことで絡んでくる紗季に対して、あたしはむっと頬を膨らませる。紗季は一番の仲良しではあるのだけれど、何かとあたしと将門の仲をさらに深めてこようとしてくるところが玉に瑕だ。
だいたい彼氏なんてできたことのない自分からすれば、友達以上の関係というものがどんなものかさえも想像がつかない。
「でもアイツだけはありえない」と誰にも聞こえない程度の声でそんな言葉を呟いていると、再び紗季の声が耳に届く。
「まあ今回はせっかく朱華企画で遊びに行けるんやから、できたらみんな来てほしいけどなぁ」
もちろん萩野くんも、とウィンクと共に懲りずにそんな言葉を送ってくる相手。
あたしはそんな彼女に対して、「アイツはべつに来なくなっていいから」と言い返すと、チラリと将門のことを睨みつける。
すると向こうは一体何の話しをしているのか、たまたまこちらを見てきた将門と目が合ってしまい、あたしは反射的にぷいっとすぐに視線を逸らした。
もうっ、急にこっち見てくんなっ!
紗季にからかわれてしまったばかりということもあるのか、思わずそんな言葉を心の中で言ってしまうあたし。
でも、それ以上に……
あんな風に他の女の子や、それにお姉ちゃんや心晴の前でデレデレしている将門のことを見てしまうのは……もっとムカつくっ!
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