(四)-2(了)

 しばらくの沈黙の後、恵美里は肩を震わせ始めた。

「君のだろう」

 山城が追い打ちをかけた。

「仕方ないじゃない……」

 恵美里は、腹からしぼりだすように声を出した。

「仕方ないじゃない、他にどうしたらいいか、わからなかったんだから! 何をどうしろっていうのよ!」

 うつむいたまま、恵美里は大声を上げた。

 一呼吸置いてから、恵美里は静かに続けた。

「もう少しだけでいい、親がマシだったら、お金があったら、裕福な家庭だったら、私を褒めてくれていれば、私が頑張っていたら……。そうでなければ、私は産んだ子の首を絞めたりしなかったわよ……」

 そう言い終えると、恵美里は声を上げて泣き始めた。

 山城は何も言えなかった。ただ、恵美里が泣くのをただ見つめていた。


(了)

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へその緒 筑紫榛名@12/1文学フリマ東京え-36 @HarunaTsukushi

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