(二)-4
山城純雄と城陽典孝が小倉敏郎に促されて取調室に入った。
スチールデスクの向こう側に彼女がいた。頭をうなだれて、下を向いていた。
「久しぶりだな、藤森」
そう言って山城は恵美里の反対側に座った。
そして続けた。
「一年半くらいぶりだな」
うつむいたままだった恵美里は少し頭を上げて、山城の方に目を向けた。
「覚えていないか、ほら、北綾瀬署で。君は万引きで捕まって署に連行されてきた」
恵美里は驚いた目で顔を上げた。しかしすぐにまた下を向いた。
「その後、どうしてたんだ。学校は?」
「行ってない」
「オフクロさんは?」
「男と一緒」
「今もか」
「たぶん」
「たぶんって、家に帰ってないのか」
「ずっと帰ってない」
「どこで何をしていたんだ」
山城がそう問うと、恵美里はうつむきながら少しづつ話を始めた。
(続く)
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