第3話
母国と真逆な明るすぎる太陽は、空港をはなれても、ずっと続いていて、遠くに来てしまったことを、涙腺伝いに刺激している。
雲すら見えない、どぎつい青が広がる空だった。
日本の空はどんな色だったかな、ゆっくり見ること、なかったな。
車で街を走ると、日本国とは異なり、英語圏のリゾート地色が濃くなった。
でも歩いている人、食事をする人、ショッピングを楽しむ人、沢山の日本人で溢れている。
購買欲をかきたてる看板にも、日本語で、誘いかけるものばかりだ。
聞こえる言葉も、日本語。
驚いたことに、店員やホテルマンまでもが、日本人だった。
観光、リゾート、食べ物は日本語で溢れている。
「英語はどこに消えたの。日本語に取り巻かれてるわ。」
つい、口から出たのが母国語で、叔母は苦笑いをしただけだ。
リトル東京には、私のような日系人が暮らしていて、叔母は、そこで、日本暮らしをしていた。
「日本人なのよね、結局、日本に片足つけとかないと、帰りたくなるの。」
外国の人と一緒になって、反対されて、日本を飛び出してみてもね、意地張ったって、本当のところは、日本にいたかったのよね。
気付いた頃には、遅くて、帰れるところは無くなっているし、ここで暮らすしかないような、生活の基盤が作られてしまっていたのよ。
「母国に帰りたくて、ここに来たのかと考えていたのよ。」
あなたの家族に寂しい報告をせずに済んで、本当によかったと、涙を浮かべる叔母に、申し訳のない気持ちでいっぱいになった。
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