第22話

「………ああああああ」


「……まだきつい?」


「……うん。吐きそう」


 遊園地で(主に沙耶香が)ハッスルした次の日、俺はダウンしていた。昨日乗ったジェットコースターの影響がまだ体に残っているからだ。


 最初に乗ったあの恐怖のジェットコースターをなぜか知らないが帰りにもう一回乗ろうと沙耶香が言い出し、そして無理矢理乗せられ今までそれが引き摺られている。

 マジでやばい。胃もたれレベルMAXみたいな……分からないか。

 胃が裏返ってるような。そんな感じ。


「うおえええええ……」


「……うう、ごめんね」


「……大丈夫だか──うっ!?」


「ごめんなさああああああい!!」


 ……泣きじゃくる沙耶香を見れただけ、マシ、か。

 そんなくだらないことを考えながら、俺は早朝なのに、意識を失ったのだった。

 ちなみに、昨日は退院した直後だったということだけ、伝えておこう。






「治った」


「………」


 そして今度は、俺が治った代わりに沙耶香がダウンしていた。

 理由は単純、沙耶香が料理に失敗したからだ。

 

「……砂糖を、2倍にしてしまった」


「美味かったぞ。甘くて」


「私……甘いのマジで無理だから……うっ」


「……大丈夫か?」


「……泣きたい」


 今回のはかなり凹んでいるようで、昨日の件含め俺に対し責任を感じているようだ。

 全く……そんなことをないのに。


「また次失敗しなけりゃいいだろ?」


「……そうだけど」


「ならいいんじゃねぇの?今後に活かすってことで、この話はおしまいにしようぜ」


「……うん」


 沙耶香はいつの間にか流していた涙を拭いて、そして姿勢を戻す。


 彼女は今日含め、最近失敗ばかりで気分が落ち込んでいた。それをビシッと正すのは彼氏である俺の役目だろう。

 ダメなところばっかり見せちゃってるから、こう言う時くらいちゃんとしなきゃね、なんて思いつつ。


 それでもやっぱり、心配なのだ。

 沙耶香はこうやって1人で責任を抱え込もうとして、それを引きずってまた失敗して。そう言った悪循環に陥りやすい。

 それは人間誰しもが陥るものだが、彼女の場合それが起こる確率が普通よりも高いのだ。

 だからこそ、俺が彼女の逃げ道とならなければならない。心の拠り所とまでは言わないけど、一緒にいて安心できるように、それくらいにはなりたいと思っている。


「……ありがと」


「どういたしまして。それじゃあ切り替えて、何しようか?」


「う〜ん……あ」


「ん?どうした?」


「こうするのは、どう?」


 そう言いながら沙耶香は俺に近づいて抱きついた。

 全身でぎゅっと俺の体を抱きしめているものだから、身動きが取りずらい。


「沙耶香?」


「家で2人でゆっくりするの。今日は2人ともダウンしたし、ゆっくり休みたいし」


「……そうだな」


 確かに言われてみれば、まだ完全に治ったとは言い切れない。所々だるく感じるところがあるからだ。

 きっとそれは彼女も同じなのだろう。


「……じゃあゆっくりするか」


「うん」


 こうして、この日の残りの時間は家でゆっくり思い思いの時間を過ごしたのだった。


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