第20話

それからの話をしよう。

 まず最初に、俺は見事、レポートの提出に遅れた。しかし先生に事情を話したら特別に許しを貰えた。先生の方でも事情を知っていたらしく、元々出さなくてもよかったのだとか。というか、出せないと見越していたのだとか。


 「あんなのあってレポート出してきたら、それこそ貴方、異常よ?」


 俺が先生のところに行った際、言われた言葉だ。俺普通に出そうとしてたと言ったら、“異常”のレッテルを貼られた。解せぬ。

 まあ、課題が減ったのは素直に嬉しいので良しとしよう。普通にレポート面倒くさかったし。



 次に。これはレポートの後に話すようなものではないが、というか、これを最初に話すべきだったのだろうが、俺は一週間と三日で退院することができた。中学の時も同じくらいの期間で退院できたので、まあ予想はしていた期間ではあった。

 なんでも、この期間で殆ど完治するのは速すぎるらしく、俺の生命力が強いのか、それともまた別の理由があるのか知らないが、とにかく俺の体は強かったらしい。まあ、強いことはいいことだな。

 しかし、最後に担当の医者から言われたことなのだが、


 「女性関係には、もっと気をつけた方がいいよ」


 ………めっちゃ気をつけてますが!?向こうからやってくるの!決して俺のせいじゃないの!

 と声を大にして言いたくなったのは秘密だ。



 そして三つ目だが、これが一番気になっていただろう、山代についてだ。

 結論から言えば、逮捕され、そのまま起訴された。前みたく、精神鑑定によって不起訴とはならなかった。

 その知らせを聞いた時、俺はとても、それはそれはとても長く息を吐いた。俺の心は安心感でいっぱいになったからだ。

 これで一つのトラウマに終止符を打てたと思うと、凄く、ホッとした。

 

 「よかったよおお……」


 その知らせを聞いた時、隣には沙耶香がいた。俺からそれを聞いて泣いていた。俺もそれをみて泣きたくなったが、グッと堪えて、そっと抱くだけに留めた。

 中学から続いた一連の出来事を俺は一生忘れないだろう。いや、忘れることなんて、できるはずが無い。

 今でも、あの時の選択を自問自答したりしているが、何が正解だったのか、分かっていない。分かる訳がない。

 それに、これは推測なのだが、もしあの告白を受けたとしても、今日みたいな幸せな日々を送ることはできなかっただろう。

 あいつはあの時から、自分中心で行動をしていた。きっとその途中で俺たちの意見は食い違い、そしてあの時のような惨劇が起こるのだろう。

 ……あれ?おかしいな。まるでSc○ool ○aysの伊○誠みたいな感じになってるような。

 でもあれって○藤誠が悪いのであって、今回のは俺は全く悪くないという違いがある。じゃあ問題ないのか……?うーん……分からん。まあいいや。

 とにかく、俺は平穏の日々を取り戻すことができた。それだけでいい。


 「疲れたよ」


 「そうだね」


 「今度さ、旅行行こう」


 「いいわよ。どこにしよっか」


 「静岡に行きたいな。もしくは群馬」


 「なんで?」


 「なんとなく、かな」


 「なんとなくで決めていいの?」


 「いいんだよ。もう、重い決断はしなくても良くなったんだから」


 「そうだね」


 俺たちは二人で歩いていく。

 過去を一緒に背負って、それをたまに振り返って、そしてそれを懐かしんで、後悔して。そしてそれをまた糧にして、進んでいく。


 この先もきっと後悔の連続だろう。何かに躓くことだって、多々あるだろう。意見の衝突だって、数え切れないほど起こるだろう。


 でも、その度に俺たちは成長する。後ろを見て、それに手を振って、そして前を向く。向いた先には新しい、素晴らしくも煤が付き、ちょっとだけ汚れた、そんな未来が待っているのだろう。しかし、それらの汚れを無視してこれでもかと言わんばかりに光り輝いている。そんな未来が。


 俺が今、いるかも分からない、神に祈ることはただ一つ。


 沙耶香と永遠に、何気ない当たり前の日々を、過ごせますように。






               完




____________________________________


 あとがき 


 ここまで読んでくださって、ありがとうございました!

 最後ちょっと駆け足になってしまいましたが、この作品はこれにて閉幕でございます。

 番外編に関しましては、一応書く予定ではありますが、一段落ついてからになりそうです。つまり受験が終わってからですね。

 受験が終わるのは三月中盤辺りでしょうか。作者はそこ辺りで終わるだろうと見越しています。なので、少々お待ちいただければ。

 暇つぶしに書いて、出来上がった場合は随時更新させてもらいますので、その際は是非読んでいただけると幸いです。

 また、今年中に新作出そうかな……なんて考えていたりもしていますが、難しいですね。新作を出した際には是非読んでもらえると本当に嬉しいです。


 この作品が良かったと思いましたら是非☆や♡、作品のフォローなど、よろしくお願いします!


 ではっ!




 ※この作品はフィクションです。

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る