第18話

 (山代遥視点)


 私は昔から恵まれていた。しかしそれを自覚することはなかった。何故なら、小学校の時は劣等感に苛まれていたからだ。


 何故私は他の人よりも根暗なのだろうか。何故私はこの状態でも可愛いはずなのに男子はこっちを見てくれないのか。何故私には他の女子が持っているような化粧を買ってもらえないのか。何故私見下すかのような目で見てくるのか。そんなことを思いながら私は成長を続けた。

 

 小学校の感情を引きずったまま、中学校に上ろうとしていた時、私は変わろうと思った。こんな根暗は卒業しよう。そう思って、いろんなことをして、中学校に入学した。


 するとどうだろう。周りの目は180度変わったではないか。

 元々可愛いと言うことを自覚していた私は、当たり前だと思うと同時に、今まで見下していた奴らを見下し返すという、この優越感に酔いしれていた。

 堪らない。男子共が私を邪な目で見てくる。女子は私を嫉妬するかのような目で見てくる。この、私が頂点に立ったかのような、そんな感覚。私は癖になった。

 

 しかし中にはそんなふうに見てこない奴らもいる。

 私は考えた。この学校で本当の頂点に立てば、そんな奴らも私のことを嫉妬や興奮などの目で見てくれるに違いないと。

 故に私はグループを作り、勢力を広めていった。更に、トップに立つのだから、彼氏の一人くらいは必要だと思った。

 

 「……彼氏、簡単に作れるでしょ」


 その頃の私はそう思っていた。

 彼氏にするのなら、私と同等くらいの男子でなきゃ釣り合わない。

 そう思った私は、女子人気の高い人を私の彼氏にしてあげようと決めた。そして調べてみると、


 「……前島新谷、ねえ」


 その名前が挙がった。前々から噂は聞いたことがある。何でも、部活にしか興味がない男子、らしい。

 告白しようにも、『部活に専念したいから』との理由で断られるのは必然だと思わせるほど、部活に集中しているのだとか。

 前にも教室内で、“彼女とか作るの?”と聞かれた際、“100パー無い”と答えたのだとか。その時の彼の声は本気だったらしい。

 顔はかっこいいが、告白するには勇気がいる人。それが彼だそうだ。


 「……余裕でしょ」


 しかし私はそれを聞いてなお、余裕だと感じていた。

 部活に専念したい?そんなものは私と比べたら塵にも等しくなるでしょう。

 簡単だと、この時の私はそう思っていた。

 甘かった。



 「ごめんなさい」



 「───え?」


 

 ………断られた。人生で初めての告白を。私の、大事な初めてを。目の前の男は断った。

 どう言うこと?何故? 


 「そんな訳がない……そうだよ……私が断られるわけが……そうだよね……?そう、だよね……?新谷、くん?」


 彼は何も言わない。それが全てだと言わんばかりに。

 その時、私の中の何かが、外れた。


 「そうだよ……私の告白が断られる訳がないんだ……私は新谷くんにオッケーを貰った……そうだよ、へへへ、やったあ……私にも彼氏ができたんだあ……」


 そうだ、私が断られるはずがない。ここから、ここから始めるんだ。きっと、今彼が言ったことだって嘘に決まってる。私を揶揄ってるんだ。




 この頃から……いいや、本当はもっと昔から。私はどこか、頭のネジが十本単位で消えていたらしい。

 私の中で、全てが塗り替えられていくのを感じる。認識が、何から何まで変わっていくのを感じる。

 私に失敗なんて、許されない。そんな感情が、全身を巡り、塗り替えていく。



 もう、戻れない。



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 既に山代遥は狂っていると言うことをお忘れなく。色々文章がおかしいところはそのように認識してください。

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