第15話

 授業を終え、昼。

 俺は沙耶香と合流して、中央にある学食のところまで来ていた。


 「うへ〜……疲れたぁ〜……」


 注文する前に席を取った俺たちはひとまず座って休憩することにした。

 そして座ると同時に沙耶香は上半身をテーブルに倒した。どうやら授業がつらかったようだ。すごくぐったりしている。


 「新谷く〜ん、私の分も頼んできてぇ〜」


 「……分かったよ。ちょっと待ってろ」


 「やさし〜。ありがとぉ〜」


 「へいへい」


 俺はスマホと財布を持って席を立った。


 「あ、そう言えば何頼むか言ってなかった」


 「そうだった。何にする?」


 「ラーメン」


 「了解」


 沙耶香の注文を聞いて、今度こそ俺は券売機へと向かった。

 券売機についた俺は、ラーメンとカレーのボタンを押した。そして金を払って食券を取ってカウンターへと向かい、しばらく待つと俺が頼んだカレーと沙耶香のラーメンが出来上がった。

 俺はその二つをトレーに乗せて、席へと向かう。


 「持ってきたぞ」


 「ありがと〜。あ、水とか持ってきといたから」


 「お、サンキュー」


 「それじゃ」


 「「いただきます」」


 それを言い終わるや否や、沙耶香は女子らしからぬ豪快な食べっぷりを俺の前で見せた。その様子から。彼女がどれだけお腹を空かせていたのかがよく分かる。


 「詰まらせるなよ?」


 「ん?ん」


 俺の話をちゃんと聞いているのか分からないが、まあいいだろう。俺も食べ始めるか。

 ここのカレーは辛さを大、中、小の三段階選べる。俺は辛いのは結構得意なので、いつも大を選んでいる。どのくらい辛いのかといえば、唐辛子を丸々囓ったときの辛さくらいだろうか。分かりづらいなこのたとえ。


 「……うわぁ、辛そう」


 と、落ち着いてきたのか、沙耶香がこっちを見ながら軽く興味を持っている。


 「食べるか?」


 「……いや、いいよ。辛いの苦手だし」


 まぁ、辛いの苦手なことは知っていたので、答えは分かりきっていたが。美味しいのに、残念だなぁ。


 「よくそんなの食べれるよね」


 「そんなのとは何だ。美味しいぞ?これ」


 「いや、前に唐辛子を丸々囓ったときの辛さって言ってたけど、それ絶対それ以上だったよ?」


 「食べたことあるのか」


 「……友達に無理矢理、ね」


 「へぇ。一度体験してたのか。だったら行けるだろ」


 「無理だよ!!!もう色からして無理だよ!!もう真っ赤を通り越して黒になってるし!!やだ!!食べたくない!!」


 「……そうか」


 そこまで拒絶されるとは……残念。



 昼ご飯を食べ終わり、沙耶香は午後の授業へと向かい、俺は研究室のある南棟へ向かった。

 そして、先生に許可を貰って二箇所それぞれ1時間半ずつ見学をした。

 それが終わったあとはさっきの学食を食べたところで沙耶香を待った。

 どれほど待ったのだろうか。いや、大して待ったわけではないのだが、そんなことはどうでもいい。沙耶香が授業を終わらせてこっちに来た。疲れた様子で。


 「……疲れたぁ〜」 


 「お疲れ。どうする?行く?」


 「うん。行こ」


 「どこ行くが決めてるのか?」


 「取り敢えず……ここ」


 そう言って、サークル一覧の紙に指をさしたところは、まさかのサッカーだった。


 「……サッカー?」


 「そそ。前から気になってたんだよね〜」


 「……マジか」


 「まぁ、早速行こっか!」


 「お、おう……」


 俺と沙耶香はサッカーサークルが活動しているところまで行く。その途中で俺は気づいた。


 「サッカーサークルって、女子しかいなくね?」


 「男子と女子で分かれてるもんね」


 「……俺、外で待ってるわ」


 「うん、分かった。まぁ、多分すぐ終わるから」


 沙耶香と分かれた後、俺は近くにベンチを見つけたので、そこに座る。


 「あ、新谷くん!」


 と、その瞬間、俺の脳が警報を発した。

 俺はその場を離れ、その声の元を向く。


 「久しぶり♡」


 そこにいたのは、恐怖の権化、山代だった。



 

 

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