第7話

 夜。とは言っても深夜と言われるほど夜が深くなったわけではない時間帯。


 「沙耶香さん、ありがとうございます!」

 

 「本当に、花本さんありがとう」


 「いえいえ、泊めてくれるんですから、これくらいさせてください!」

 

 なんと沙耶香が夜ご飯を作ってくれたのだ。何度か彼女の手作り料理を食べたことがあるが、その時よりも美味しくなっている。マジで美味い。


 「沙耶香さん、料理とても上手ですね!とても美味しいです!」


 「真穂ちゃん、ありがとう」


 沙耶香も褒められてとても嬉しそうだ。

 ちなみに今俺たちが食べているのはご飯、味噌汁、卵焼き、ハンバーグ、そしてサラダの五種類だ。バランスも良く、味付けも濃すぎず、かといって薄すぎない。丁度良い塩梅だ。


 「いつも美味しいな、沙耶香の作る料理は」


 「あ、新谷くん……」


 素直に褒めると、照れてしまった。可愛い。


 「あ、そうだ新谷、真穂」


 「何?父さん」


 「明日から来週まで出張だから、家のことは宜しく頼むよ」


 「またか」


 「最近多いね〜」


 「会社の方針でな、事業を拡大することになったんだ。明日の出張もそれに関連しててな」


 「成程ね」


 ということは、父さんはこれから忙しくなると。体調には気をつけてほしいものだ。


 「ああ、それと」


 「まだ何かあるの、父さん」


 真穂が怠そうに父さんに聞く。


 「新谷、来たんだってな」


 「っ!?」


 「えっ!?お兄ちゃん、それって本当なの!?」


 「……ああ」


 真穂が驚いた顔でこっちを向く。あれは大きな事件だったからな。そのせいで引っ越したのもあるし。

 真穂と父さんが心配した顔でこっちを向いている。

 そして沙耶香はと言えば、さっきから黙々と食べている。気を遣わせてしまっているようだ。


 「でもすぐに追い返したさ。相変わらずだったけどな」


 「……そうか。でも気をつけろよ?」


 「そうだよお兄ちゃん、あいつ、マジで気をつけたほうがいいからね?」


 「ああ、分かってるさ」


 「……新谷、また──」


 「引っ越さないよ」


 「……そうか」


 沙耶香の元から離れるなんて、今の俺にはそんなことは絶対に出来ない……できる訳がない。

 俺にとって沙耶香の存在はもうなくてはならない存在となっているし、それは沙耶香も同じだ。

 共依存。そう呼ばれるのかもしれないが、それは絶対に違うと断言できる。俺とさやかとの間には確かな愛が存在しているからだ。


 「困ったことがあったら相談してくれ。特に、山代関連はな」


 「分かったよ、父さん」


 「私も、気をつけたほうがいいかな?」


 「それはそうだろう。多分、向こうから接触を図ってくると思うぞ」


 「……私、あの人マジで苦手なんだけど。話しかけておいて、自分のことばっかで私の話全く聞いてくれないし」

 

 「もうあれはそういうものだと諦めたほうがいい。話しかけられたらすぐに切り上げて逃げるべきだろうな」


 「……そうだよね。はぁ、面倒だなあ」


 憂鬱な気分のままだったが、そこは強引に話を変えて何とか和やかな空気を取り戻した後、食べ終わった俺と沙耶香は俺の部屋でくつろいでいた。


 「それじゃあ、話してもらおっかな。その、“山代さん”の話」


 「……ああ、あまりいい話じゃないぞ?」


 あれは本当に最悪だった。

 俺の中の本能が無理矢理避けていたがために忘れていたに過ぎず、あいつと会ったことで記憶が再び蘇ってしまった。

 前までは無理だったが、今では鮮明に思い出せる。


 あの、地獄の中学時代を。



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 今、新作をいくつか書いてる途中なんですが、どれも全然話数が足んないという……そのせいでこれも書けていなくて、ストックは一応3話くらいあるけど心許ないというか……。

 受験がなかったらめっちゃ書いてたのに。ごめんなさいね。

 こう見えて理系なもんで。色々大変。

 


 7月22日 修正入れました。

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