第4話

 次の日、沙也加は友達と遊びに出かけた。

 俺の彼女はお世辞抜きでかわいいからナンパとかに捕まってそうでちょっと怖いが、大丈夫だろう。彼女を信じることも大事だからな。

 で、そんな俺は何をしているのかというと、目の前の客人の対応をどうしようか悩んでいた。


 「お久〜」


 「……何でここが分かった」


 「ん?そんなん、知ってるに決まってんじゃん?」


 「んなわけねぇだろ。家の住所教えてないだろうが」


 「でも私は知ってたよ?」


 「だから何で知ってんだって聞いてんだよ。どこで、誰に、聞いた」


 「聞いてないってば。ていうかさ、私が君のことについて何でも知ってるのは君が一番よく知っているはずだけど?」


 「……」


 気持ち悪い。再会して最初に思ったことだった。

 こいつの名前は山代遥。小学校に入った時から中学校を卒業した時まで一緒の学校に通っていた同級生だ。謂わば幼馴染、と俺たちの関係を知らない人からしたらそういうのだろう。しかしそんな関係ではないし、なりたくない。何故なら──


 「俺は忘れてねえぞ。あの時、お前が俺にしたこと」


 「……」


 こいつは俺を殺そうとしたのだから。







 「で、なんの用だ」


 「いいじゃないか。そもそも、あれは君が悪いんだろう?」


 「何も悪くねえよ。全てお前のせいだろうが。お前が勝手に妄想して、それで人様に迷惑をかけてるんだから」


 「妄想じゃなくて、事実じゃないか」


 こいつは俺に会うたびに毎回おかしなことを言って来ている。



 「だって私たち、付き合ってるんだからさ」



 山代遥。こいつは小学生の時から何も変わっていない、妄想の中でしか生きられない哀しい女だ。そしていつものように、目からハイライトを消して、俺に迫ってくる。ホラーだホラー。恐怖映像でしかない。


 「だから、彼女の私が彼氏である君のことについて知らないことなんてないのは当たり前でしょう?」


 「当たり前じゃねえよ。それをなんて言うか知ってるか?ストーカーっていうんだぜ?」


 「ストーカー?何を言っているの?私は君の彼女なんだから、ストーカーではないんだよ?」


 ……本っっっっっっっ当にめんどくせえ。マジでめんどくせえ。

 大学入る直前でこいつに出会うとか本っっっっっっっ当に運が悪すぎる。


 「これ以上しつこいんだったら前みたいに警察呼ぶぞ?」


 「っ!?なんで彼女にそんな酷いことをするの!?信じられない!!」


 「俺はお前の彼氏じゃねえから。警察に通報するの当たり前だろうが」


 前にしつこすぎたから一回だけ警察を呼んだことがあった。その時どうやらトラウマができたらしく、こういえば大体引いてくれるようになったのだ。

 俺はスマホを出して、電話のアプリを開く。


 「ほら、かけるぞ」


 「うっ……わ、わかったわよ。今日は帰るわ。でも、あなたは私の彼氏だってこと、忘れないで」


 「すぐに忘れてやるよ」


 そして彼女が後ろを向いた瞬間に俺は家に入ってドアに鍵をかけた。

 その後急いで全ての窓に鍵をかけ、カーテンを閉める。


 「……よし」


 これは窓から俺の部屋に入ってくるのを防止するためだ。

 そしてじっとすること10分。


 「……俺は生き延びた」


 やっとこの苦しみから解放された。10分経って何も起きなかった時は問題ないと言うこと。既に彼女はここ周辺にはいないだろう。


 「……めんどくせえ」


 そんな言葉とは裏腹に、体の震えが止まらなかった。

 大学に入る前からトラブルが起きるとか、本当についてないとガッカリする。

 俺はこの先の未来にとてつもない不安を覚えるのだった。


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7月1日 修正入れました。


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