一章番外編
第40話 番外編
時間があったので番外編書いてみました。不定期になりそうだけど、しばらくはこんな感じになりそうです。
あと頑張って文量ちょっと増やしてみた。誤差の範囲だけど。
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「くぁw瀬drftgyふじこlp」
「急にどうしたの?」
思わず某ネットスラングが出てしまった。それほどまでに今俺はかなり追い詰められている。
始まりは俺の彼女である沙耶香の一言からだった。
───今日、一緒に勉強しない?
高三となって受験が迫ってきた中でのその提案は俺にとってはまさに救いの手だった。二年間のあの一連の出来事であまり勉強に手がつけられていなかったからだ。でも定期テストの順位はいつも真ん中をキープしていたが。
まあ、そんなことがあったので受験が心配だったのだ。そんな時に俺よりも勉強ができる沙耶香のこの言葉である。今はどんなものでも縋りたい気分だったので俺は快く承諾した。それが地獄の始まりだと知らずに。
「がはっ……」
開始から2時間、俺はダウンしていた。もう駄目だ……やる気でねぇ。
そして思わず上半身の力を抜いて、倒れ込んだ。
「まだ2時間しか経っていないじゃない、そんな早くダウンしていたらこの先きついよ?」
「……俺の分まで……頼む」
「新谷君の分までやっても君の頭は成長しませんよ。ほらっ、体を起こして机に向かうっ」
「……うえーい」
俺は重い体を無理やり起こして勉強を再開した。今日は俺の部屋でやってるので俺の自由が許されるはずの空間のはずだが……おかしい、彼女が制御している……これは危険だ。
「……新谷くん?」
「ヒッ!?」
「早く」
「は、はい」
向かいに座っている彼女から物凄い威圧を感じた……怖え。この迫力には逆らえない。俺は渋々、真面目に勉強に取り組んだ。そうしないと沙耶香が怖かったから。
それから3時間経ってようやく一通り方が着いた。きっつ。
「ふぃ〜。寝るわ」
「はいはい、おやすみ」
いつもとは違い、かなり勉強をしたせいか眠気が俺を襲っていた。俺はその眠気に抗わずに意識を落としたのだった。
「………んあ?」
頭が何か柔らかいもので包まれている感じがする。凄い、これは凄い。病みつきになる柔らかさだ。丁度いい暖かさから温もりを感じる。それをもっと感じたいと少し動いてみた。
「……うぅん♡」
ん?何かうめき声が聞こえたぞ?……まさか。
俺は恐る恐る目を開け、顔を上げた。
「あ、起きた?」
「……これはもしや、膝枕というやつでは?」
「そ、ご褒美だよ。嬉しい?」
「後2時間」
「だ、駄目だよ。足が痺れちゃう……」
俺は渋々体を起こした。久々にちゃんと眠れた気がする。いつもだったらあの時の悪夢を見ることが多く、そのショックで目が覚める、なんてこともあったりした。でもこの時だけはそんな事を忘れてただただ気持ちよく眠れた。こんな快眠は本当に久しぶりで、寝起きにしては初めてスッキリしている。
「ありがとう、久々にちゃんと寝れた気がする」
「ううん、あの後なんか唸りながら汗かいて苦しそうだったから……でも良かった」
そうだったのか。本当に俺は彼女に助けられている。
「それじゃあさっきのお礼に何か一つ、俺のできる範囲での願い事を一つ叶えて見せよう」
「う〜ん、あんまりないんだけどなぁ」
そう言って彼女は悩む仕草を見せる。可愛い。
「よし!それじゃあ、膝枕、私にもして!」
「ん?そんなんでいいのか?」
「いいのっ」
そう言って彼女は俺の膝に勢いよく頭を乗せてきた。“ポフッ”っていう効果音が出そうだ。彼女は本当にいい意味で変わったと思う。篠崎がなんであんなことをしたのか未だにわからないが、それでも俺たちの関係はそれで一度終わってしまった。そして俺たちはやり直した。前よりも更に深く、お互いを想い合える存在になれたと思う。
「本当に俺は幸せだなぁ」
俺は思わずしみじみと、そう呟いた。すると彼女は顔をこっちに向けてこう言った。
「そうだね」
その一言にはいろんな感情が詰まっていたんだと思う。今回一番頑張っていたのは彼女だ。だから俺は彼女が報われるべきだと心の底から思っている。俺は少しずつ恩を返すと共に、幸せになってもらえるようにこれからも努力していこうと、そう改めて決心した。
「でもその前に勉強ね?」
「…………はい」
俺の決心は今まさに揺らぎの時を迎えていた。
「あ〜、懐かしいねぇ。あの頃は本当に勉強やだやだばっかり言ってたからねぇ」
「……そうだな」
今思えば高三の時が一番心が落ち着いていた気がする。高一、高二の時は本当に精神状態が酷かった。所謂“病み期”というやつだろう。
あれが高三まで続いていたら本当に取り返しのつかないことになっていたかもしれないと思うと本当に沙耶香には感謝してもしきれない。
「でもまぁ、勉強やだってわがままが言えるようになって私は安心したけどね」
「ん?なんで?」
「それを言えるほど新谷君の心に余裕が出来ていたから」
「そうしてくれたのは沙耶香のお陰だよ。本当にありがとう」
「もう、何回言ってるのよそれ。でも、どういたしまして」
一途に俺のことを思ってくれていた彼女は、やっぱり可愛かった。
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