第36話
「……花本」
「それから先は行っちゃ駄目だよ……それはあなたが持って良い感情じゃない。絶対に」
………何で彼女がここにいるんだろうか。
「何でここに……」
「心配だったからだよ。ここ最近のあなたはどこかおかしかったから」
おかしい?何を言っているのだろうか。
「日に日に新谷くんから感情がなくなっていっていたのはわかってた。だからちょっとした弾みであなたは壊れると思ってたの。私はそれが怖かった。だから……」
心なしか花本が少しだけ腕の力を込めた気がする。そして体は恐怖ゆえか震えており、その振動が俺にも伝わってくる。
そのおかげで俺も少し冷静になってきた。確かに少しおかしいと今になって分かる。
「……ありがとう。少し冷静になれた」
「ううん」
そう言いながら彼女は体を離し、そして未だ発狂している篠崎の前まで移動した。
「篠崎さん」
「………んあ?」
そして花本は憐れみを持たせた目で彼女を見た。
「……やめて……そんな目で私を見ないで……見ないで!」
「本当に可哀想……どうして、あなたはこんなことしか出来ないのかしら」
「……見ないで……お願いだから」
「私はね、親から見捨てられたあなたに言いたいことがあるの」
……親から見捨てられた?どういうことだ?
「私は聖人じゃないから、さっき可哀想だなんて言ったけど、本当は嘘」
「────え?」
「自業自得ね、あなた。今こんなになってもちっとも反省してないんでしょう?それだからこんな目に遭うのよ。これ以上私たち───新谷くんに関わらないで。新谷くんは私のものよ」
───────ん!?
「だからこれ以上新谷くんの前に姿を現すな!このクソ○ッチが!!」
う、うわあ……凄い、凄い荒れてるよ花本……こんな姿見たことない……
「ふざけんじゃないわよ!今あなたが苦しんでる以上の苦しみを私たちは味わったのよ!?それを何よ!知らぬ存ぜぬで新谷くんに復縁を迫って!馬鹿じゃないの!?私たちの苦しみを理解していれば復縁なんて考えないし、そもそもこんな事をして虫が良すぎると思わないかしら!?」
あれ、花本ってこんなキャラだっけ?
「ちょ、ちょっと花本さん?一旦───」
「新谷くんは黙ってて!」
「は、はい!」
「大体あなた人としておかしいと思わなかったのかしら!?もうあなたは人間じゃないわよ!?そんな性欲に溺れてるあなたはもうただの猿よ!それに───」
「───落ち着け」
「あっ……」
俺は自然と彼女の手を握っていた。どうしてだろうか……でもこれが彼女を落ち着かせる方法だと自然と分かった。
「……新谷くんに言った手前なのに……私」
「良いんじゃないか、別に。吐き出したかったんだろ?」
「う、うん」
そして花本が静まったのを確認してから俺は篠崎の方を向いた。
「篠崎」
「う、うん」
「これ以上俺たちの前に顔を、存在を見せてくるな。お前は俺たちにとって目障りそのものだ。お前の存在は俺たちにとって不幸しか呼ばない疫病神そのものだ」
「……………っ」
「じゃあな。付き合ってた時は楽しかったぜ」
そう言って俺は花本を連れてそこを後にした。
「あ、あああ、あああああああああああああ!!!!!!!!」
篠崎の叫び声は夕焼けと共に遠くまで響いていた。
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後数話で終わるよ。
取り敢えず篠崎はこれでENDですねぇ。
残りは大月ざまぁと、後日談くらいだけ。
それとあとがきかなぁ。
よろしくお願いします!
2月20日 修整を入れました。
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