第35話
「久しぶりね、新谷」
下校途中に道を塞ぐかのように篠崎がいた。
うっわぁ。逃げてぇ。よし、素通りしよう。
俺は彼女のことを無視して横を通り過ぎようとしたが、すれ違った瞬間俺の腕を掴んできた。
「ちょっと、いきなり無視とか、どうかしてるんじゃないの?」
お前の頭がどうかしてるよ。
「ねえ、何か言ってみたらどうなのよ」
「じゃ」
俺は彼女の腕を振り解き、そのまま歩き始めた。
「ちょっと!?待ちなさい!」
しかし彼女はすぐに俺の腕をまた掴んできた。
「離せよ、俺は早く帰りたいんだ」
「じゃあ話を聞いてちょうだい」
「お前の話なんざ興味ない」
「っ!?いいから聞きなさい!これはあなたにとって悪い話じゃないわ!」
「お前の話は全て悪い話だよ。じゃあな」
「っ!?待って、一回落ち着きましょう?話を聞くだけでもいいから、お願い!」
「どうせあれだろ?やり直そうみたいな話だろ?」
「そ、そうよ!わかってるじゃない!あの時の事は謝るから!まだ私たちやり直せると思うの」
は?何言ってんだこいつ。俺は思わず彼女の方を向いた。
彼女の顔はとても酷いものだった。やつれていて、目の下に濃いクマがあって、髪もボサボサで、変わりようが凄かった。
「私はまだあなたのことが好きなの。お願い、私にチャンスをくれないかしら?だから……」
「目障り」
「っ!?何よ!私よりあの女の方が良いわけ!?私の方が彼女よりも優れているわ!容姿も何もかも、あの女よりも優れているのよ!?それを何で……」
「容姿が優れている?ハッ、笑わせんな。今のお前ほど無様で、惨めで、汚い姿は見たことがない」
「───は?」
「今の俺の気持ち、教えてあげようか?スッキリしてるんだよ。今のお前を見て、俺はすごくスッキリしている。心が喜びで染み渡ってるんだよ。お前のその姿、惨めな態度、追い込まれている表情、その全てが、俺を幸せにしてくれる」
「な………何を言って……」
「ああ、ようやく感情というものが少し取り戻せた気がするよ……ありがとうな、こんな惨めな姿で俺に会ってくれて」
「あ、あああ、あ」
彼女は俺を掴んでいた手を離し、地面にしゃがみ、頭を抱え始めた。
幸い、ここには誰も来ていない。何を言っても許される。二年間の苦しみをここで、ようやく……
「俺は辛かった。ここまでずっと。そして最近感情も失ってますます苦しかった。でもな、お前のおかげで希望が持てたよ。あ、そうだ、さっきの返事、教えてあげよっか」
「や……やめて……これ以上……言わないで」
「答えはNOだ。絶対に今後一切復縁なんてしない。お前は安元とかと一生盛ってろ」
「ああああああああアアアアあああ!!!!!!!!!!」
今の俺の表情はきっと酷いだろう。でも、これはやめられない。楽しすぎる……この叫びを俺は聞きたかった。
「もう一度言ってやろうか?ん?」
「もう……もうやめて……」
「そうかそうか、ならもう一度……」
「新谷くん!!!」
その時、後ろから衝撃が来た。
どうやら俺は抱きしめられている………のか?
「そこから先は一線を超えてるよ。新谷くん」
後ろを向いて、顔を確認した。
「───え?何で、ここに……」
俺を抱きしめていたのは、花本沙耶香だった。
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書きたかったことが書けて満足していますw
特に篠崎の叫び声を書いた瞬間がめっちゃ楽しかったw
『あ』の連打は楽しい。
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