第29話

 (篠崎莉緒視点)


 「はあ!?どう言うことよ!?何でもっと酷くなってるわけ!?」


 突然私と三上の写真が出回り、私の印象が急激に落ちてからしばらく登校を避けていた。どこから漏れたのだろうか。いや、もしかしたらあの神功路という三上の元カノが流したのかしら。でもチラッと彼女を見た機会があったけど彼女自身も驚いていたようだし……本当に意味わかんない!


 しかも登校せずに部屋に引きこもり始めてから来た安元からの連絡で私に対するイメージはあの二人よりも酷くなっていたという。というか、逆にその噂によってあの二人の株は上がったらしい。意味がわかんない。


 それにむかついた私は安元に花本と新谷に少しお灸を据えるよう命令した……したのに……何であいつミスってんのよ!?新谷はともかく、花本さえできないとは……意味がわかんない!

 

 もうあいつは駄目ね、使えないわ。最後に適当に仕事させて縁を切りましょうか。

 そうと決めた私は彼に引き続き情報を集めるよう連絡した。

 今私が学校に行ったら白い目で見られるのは当たり前。あんなの耐えられるわけない。そう考えると無性にムカついた。


 「クソがっ!」


 イラついた私は部屋で暴れたのだった。



 ーーーーー


 (主人公視点)


 ……入る高校を今更ながら間違えたかもしれない。もう少し下調べすればよかった。まあそんな後悔なぞ、今となってはどうでも良いのだが。

 本当にこの学校にはヤバいやつが本気でヤバい。ヤバいやつとヤバくないやつの差が激しすぎる。


 噂に流れやすい奴らが大きく騒ぐせいでそれが真実になってしまっている。そして訝しんでいるやつは殆ど黙っているので、否定する奴はいない。

 発言力が強いやつが殆ど───というかもう全員と言っても良いかもしれないが───噂に流れやすく、そして馬鹿故に騒ぐので瞬く間に広がり定着する。俺らの代が偶々そうなのか、もしくはそう言う風に集めたのかは知らないが、それでもおかしい気がする。


 「はあ」


 そう思って一年の真穂に聞いてみたが、比較的まともだと言う。少なくとも噂を素直に信じないまともな人たちは比較的多いらしい。と言うことはうちの代だけ頭がおかしいと言うことだ。

 思わずため息が出てしまった。俺らの代だけ精神年齢が低いと言うことに呆れてしまう。本当に高校生なのか?と思ってしまうような発言が休み時間に聞こえてくることが多い。

 ヤバい。愚痴しか出てこない。それに学校を運営してる側もおかしいし。


 「おーい、新谷」


 「んあ?」


 ぼーっとそんなことを考えていると、幸太郎に呼ばれた。


 「大丈夫か?」


 「ん、大丈夫だぞ、幸太郎。てかどうした」


 「いや、今日、あれだからな。忘れてないだろうな」


 「ああ、覚えてるよ」


 「……この一連の事が終わったら……いや、何でもない」


 「ん?何が言いたいんだ?」


 「本当に何でもないから……いや、やっぱ言うわ。終わってそれが治らなかったら精神科行こう」


 「……は?」


 「見ればわかる。感情が欠落しているのがな。愚痴ばかり考えてしまうのは今まで抑えてたものだ。感情が無くなった今、その壁が決壊したからそればかり考えてしまうんだろうな。あくまで予想だが」


 「……よくわかったな」


 「まあな。そう言うことに気付くのが得意とだけ覚えとけ」


 「おう」


 まさか幸太郎にバレるとは。凄えなこいつ。

  

 「それよりも、今日放課後な」


 「ああ。安元の尾行だろ。やるのは幸太郎と神功路だっけか?」


 「ああ。それで篠崎の家に行ったら黒確定だ。そこからの流れは……」


 「俺が警察行って被害届出せば良いんだろ?証拠はあれで良いのか?」


 「出すだけ出せば良いだろ。駄目元だからな。ちゃんと撮ったやつ消してないよな?」


 「大丈夫だ」


 そして放課後、安元の尾行が始まった。

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