第25話

 三回目の告白。しかし、俺には何も心に響かなかった。あまりにも急で、あまりにも強引だったのもあるが、それを差し引いても俺には何も感じなかった。

 

 一回目は喜び。


 二回目は安らぎ。


 そしてこの三回目は虚無だった。

 何も感じない。嬉しいとも思わない。好きになってくれてありがとうと言う感情も浮かばない。ただただ、興味がない。

 最近俺の周りの環境が目紛しく変わっていって忘れていたが、俺の心はそう言う感情を受け付けない。

 それに、俺はもう今関わってる奴ら以外の。今目の前にいるのは得体の知れない何か。ただそれだけだ。

 

 「済まないが、断る」


 「理由、教えてくれないかな?」


 「興味がない。それに、今更なんだ?急に手のひらを返してきて。あからさま過ぎるんだよ。こんなつまんない事に時間を使うほど俺は暇じゃないんだ」


 「そ、それはあんまりじゃないかな。いくらなんでも……」


 「じゃあ、なんで俺に告白してきた?」


 「それは……本当に君のことが好きだから……」


 「あの手紙、篠崎が書いたんだろ?」


 「っ!?」


 「分かるさ……少し付き合ってたからな。恐らくだがお前、篠崎に言われたんだろ?」


 「ち……違う!私は……」


 「もういい。もう一度言うが、俺はお前のことなんか興味ない。じゃあな」


 「……っ、待って!まだ言って無いことが……」


 俺は教室を出た。その間、彼女は何か叫んでいたがどうでもよかった。はあ。また噂が立つんだろうな。

 俺は憂鬱な気分になりながら、学校を後にした。








 



 そして次の日、案の定昨日のことが噂になっていた。それもかなり盛られて。そしていかにも俺が悪いような感じになっていた。まあ、いつものことだな。でも去年見たく机に落書きは無く、懐疑的な視線を送られてきている。しかし、中には噂に疑問を持っている奴もいるようで、この学校にはまだ噂に流されにくい奴もいるんだなあなんて思ったりもした。

 と、その時一人の女子がスマホを見て、びっくりした様子で他の女子にそれを見せていた。偶々目に入ったので気にせずに取り敢えず仮眠しようと顔を伏せようとして意識を逸らしたが、彼女が発した言葉を聞いて思わずそっちに目を向けてしまった。


 『篠崎さんってビッチだったんだ』


 それは普段だったら気付くはずが無い篠崎の本性が露わになった瞬間だった。そこから少しずつクラス中に伝染していった。こう言う奴らは情報を広めることだけは得意な奴らだ。その速度も尋常じゃなかった。気が付けば昼休みには他クラスにまで広まる始末だった。俺と幸太郎はこの現象に戸惑っていた。何故、急に情報が出たのだろうか。篠崎は自分に対する噂に管理は徹底していたはずだ。それなのに何故……


 言い知れない不安を抱きながら、時間は過ぎていった。




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5月5日 修正を入れました。



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