第24話

 (神功路花蓮視点) 


 その後、咲夜ちゃんの話によれば、次の日から三上君は来なくなったらしい。いわゆる不登校ってやつだ。まあ、あれだけの事をされたのだから当たり前だわ。それに、彼の事について学校で既に噂になっているらしい。彼が私に対して行った事が広まったのだ。それによって学校内での彼の評価は地に落ち、余計に彼は学校に来れなくなった。

 二兎追うものは一兎も得ず。今の彼には丁度いい言葉だと思う。私とあのクズを両方獲ようとしたのだ。それが無理だと言うことを何故彼は分からなかったのだろうか。


 私は早速今回の事を先輩たちに伝える。すると、思わぬ言葉──まあ、ある意味予想できた事だが──が帰ってきた。



 ────花本沙耶香の噂がまた出た、と。



 正直予想はしていたことだ。三上という他校という大きな手を失った彼女が出来ることはこの学校でしかない。そして直接的に手は出せない。そうしたら彼女のイメージが崩れるという危険性があるからだ。今までの彼女は進んで自ら噂を流したりしなかった。常に彼女は悪いイメージを持たれないように活動してきた。故に彼女に対するイメージはあまり下がらなかった。彼女がその真実を直ぐに揉み消したと思われるからだ。


 彼女にとって幸いにも──恐らく意図的に──知ってしまっている人は殆どいない。状況が状況だっただけに、知った人間は直ぐに彼女に口止めされていただろう。となると彼女がしてくるのは残る二人、元村か名称不明の誰かを使って噂を流すこと。恐らく元村は使わないだろう。まだ彼との信頼関係は出来ていないはずだ。そう易々とは無理だろう。となると残るはもう一人。正直その存在が私たちにとっては厄介だ。相手の情報がないのは何より怖い。どうしようか……

 それに一番心配なのは花本先輩だ。また彼女が傷付いてしまう……一体どうすればいいのだろう……




 ーーーーーーー



(主人公視点)


 放課後俺は今、目の前の状況に戸惑っている。


朝学校に登校したら下駄箱の俺宛の手紙が入れてあった。俺はこれ以上騙されるわけにはいかないと思い、その手紙をトイレの個室で破り捨てた。内容は体育館裏に来てほしいと言うものだったが、筆跡がなんとなく篠崎に似ていたので怖くなったのだ。

 そして放課後になって家に帰ろうとした時───


 「ねえねえ、前島くん」


 俺を呼ぶ声がしたので振り返ってみると、そこには同じクラスで最近転校してきた佐山さんがいた。


 「この後時間ある?」


 「ない」


 「そんなに警戒しなくてもいいのに……とにかく私についてきて」


 「断る」


 「いいから」


 「断る」


 そしてふと、俺はクラスを見回した。すると、クラスの中は俺と彼女だけになってしまっていた。いくらなんでも早すぎる……どう言うことだ。


 「私が頼んで早めに出てってもらったんだ」


 「なんでだよ」


 「君は断ると踏んでいたからね。こうでもしないと話聞いてくれないじゃん?」


 「帰る」


 「帰さないよ」


 俺は彼女の横を過ぎようとした時、腕を掴まれた。


 「離せ」


 「離して欲しかったら話を聞いてよ」


 「……っ」


 俺は彼女から不気味なものを感じ、抵抗をやめてしまった。


 「ありがと」


 「で、話ってなんだよ」


 「私と……付き合ってくれないかな。私はあなたのことが好きです」


 

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