第23話
(神功路花蓮視点)
遂にこの日が来た。待ちに待った日だ。今日、私は三上君との因縁に蹴りをつける。
付き合ってる頃、一緒に過ごして彼の性格はしっかりと理解できている。彼は極度に裏切られるのを恐れているのだ。そのくせ私を裏切った。まあ、彼は保険が欲しかったのだろう。絶対に裏切らない“私”という保険が。
そして見栄を張りたがる。
今日私は彼の学校に来ている。“話をしよう”と私が彼に持ちかけたのだ。帰って来た返事は了承だった。彼はまた前のような追及だと思っているからだ。またいつもの様に否定し続ければ諦めてくれる、そんなことを思っているのだろう。
「で、俺に話って?」
学校の一室で彼を待っているとようやく来たようだ。
「また確認するけど、これ」
そう言って前のように動画を見せる。
「浮気したんでしょ」
「知らねえよ。そいつは今の彼女だ。お前と別れた後のな」
「前言ってたことと矛盾してない?しかもこれ、私とまだ付き合ってた時のやつだけど」
「そんなん知らねえし、覚えもない。嘘つくのはやめろよ。あ?」
またいつものようなことが始まった。そして彼は威圧する。今までの私は意志が弱かった。彼の威圧に耐えられなかった。でも、私は覚悟を決めた。
「そう、あなたは変えるつもりは無いんだね」
「変えるってなんだよ」
「あなたが意見を変えるってことよ。無理だって分かったから、もう私、あなたのことを諦めるわ」
「……は?」
「今日はね、このことを伝えに来たの」
「……おいおい、なんの冗談だよ。お前は俺のことが好きで……」
「でもあなたはそうじゃないんでしょ?だったら良いわ。私は失恋したってことだから」
「ちょ……」
「……さようなら。ああ、そうだ、最後に別れのプレゼントをあげるわ」
そう言って私はスマホを操作し、咲夜ちゃんに連絡する。
『ん?三上との関係?なんで聞きたいの?』
その時、教室のスピーカーから彼の今の彼女だと言う篠崎先輩──もうクズでいいや──クズの声が響いた。これは今学校中のスピーカーから流れているものだ。
「っ!?莉緒の声!?どう言うことだ!」
「さあ?私は知らないわよ。今からプレゼントを持ってきてもらおうと連絡したのだけれど……咲夜ちゃん、遅いわ……」
そしてその間にも放送は続く。
『そんなの、ただ利用出来るだけの駒に過ぎないに決まってるじゃない。あいつは私と恋仲になってるって勘違いさせてるんだけどね』
「───は?」
『本当に、あの時の三上の元カノの顔ったら、面白かったわ』
実を言うと、あの動画は私が撮ったわけではない。私の知人が面白半分で“あんたの彼氏、浮気してるよ〜”と言ってきた際に送られてきたものだ。なんで撮ってたのかは知らない。どうせ偶々だろう。
『本当にチョロかったわ。私が言い寄ればすぐに懐いて、まるで犬ね』
「そんな……そんなはずがない……莉緒は、そんな奴じゃ……」
『私はあいつのこと一度も彼氏って思ったことないのに……勝手に私を彼女だと思い込んで……ほんと、使い易いことこの上ないわ』
「あ、あああ……そんな、ハズは……」
「あ、咲夜ちゃーん。遅かったね」
「ごめ〜ん。ちょっと手間取っちゃって」
そこに丁度いいタイミングで咲夜ちゃんが教室に入ってきた。
「こ、近藤……」
「はいこれ、頼まれたやつ」
「ありがと、咲夜ちゃん」
そう言って私は紙袋を確認する。うんうん、ちゃんとあるね。
「はい。じゃあ、これでお別れだね。さよなら」
私は三上君に袋を渡して咲夜ちゃんと一緒に教室を出た。
「あああああああああああああアアアア!!!!!!!!!!」
私が教室を出た後、叫ぶ声が聞こえた。良かった。ちゃんと効果あったみたいだ。本当に協力者のおかげだね。
「ふふっ」
彼は何を見て発狂したんだろうね?
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