第22話
(第三者視点)
とある警察署にて、そこに一人の女性が足を運び、警察官と対面していた。
「では、この内容でよろしいですか?」
そう言って警察官は聞いた内容を記した被害届をその女性に見せた。
「はい、間違いありません」
「あなたは代理人ということでよろしいですか?」
「はい」
「それでは証拠の提出をお願いします」
そして彼女はUSBメモリを渡した。
「中身はここで確認させてもらいますが、よろしいですか?」
「はい」
そう言って警察官はパソコンにUSBメモリを差し込み、その動画を見た。
「っ!?な、なるほど。分かりました。それでは最後にもう一度確認させていただきます。被害者は花本沙耶香さん、そして花本さんの代理人は桃萱瞳さん。被害内容は強姦、でよろしいですね?」
「はい。ところで、この証拠は有効なのでしょうか?」
「問題ありません。一年以上経っていますが映像で残っているなら大丈夫です。被害届が受理され次第連絡を入れさせていただきます」
「分かりました。ありがとうございます」
そう言って彼女は立ち上がり、警察署を出て行った。
「早くこの被害届の受理の手続きをしろ」
「はっ」
そして受理されたと彼女の元に連絡が入ったのはすぐだった。
ーーーーーーー
とある企業にて、一人の男が社長に呼び出されていた。
その企業は謂わば大企業に分類されるもので、その男はその会社の部長だった。
そして今日、急に社長から呼び出されたのだ。突然のことに戸惑いを見せたその男───大月康弘は社長室へと向かっていた。
もしかしたら昇格かもしれない───そんなことを期待しながら、まさか入ってから言われた言葉を予想できるはずも無かった。
「大月康弘本部長、今日限りを持って解雇とする」
「──────は?」
入って来てから言われたその言葉に数秒放心した。そして少しずつその言葉を理解した彼は初めて狼狽した。
「な、何故急に」
「君の部下から数々のパワハラ報告、それに新人の女性社員数名がセクハラを訴えてきたよ。証拠の動画と共にね」
「そ、そんなこと知りませんよ!何かの間違いです!」
「それにね、この動画、君も知っているだろう?」
そう言って社長が見せたのはとある男女の性行為の動画だった。顔や声、それに背景などはモザイクがかかっているものだ。そしてその動画が進むにつれて、遂にその言葉を発した。
『やめてください!大月さん!』
『うるさい!今お前の彼氏はいないんだからいいだろ!』
そして社長は動画を消して、彼に顔を向けた。
「“大月”という名字は君以外にもいるがね、私はとある伝から、この動画について詳しく聞く機会があったんだ。そしたらこの大月と呼ばれた男子はなんと君の息子と言われたものだから驚いたよ。大月照史。君の息子だよね?私個人としては、我が社に君のような危険因子は残したくないんだ。それに加えて前からあった数々のパワハラ、セクハラ報告。君は仕事だけは出来ていたのだが、それ以外が駄目だったようだ。非常に残念だよ。君のような優秀な社員を失くすとは」
「そ、そんな……」
「とはいえ僕もそこまで鬼じゃない。退職金くらいは払ってあげるよ。本部長だから、大体10万くらいかな?」
「じゅ、10万……」
それは本部長の退職金にしてはあまりにも少ない金額だった。
その言葉で本当に自分はこの会社にいられないんだと、彼は悟った。
「はいこれ10万円。荷物を纏めて今日中に取っ払うように」
「は、はい……」
「ああそれから、新しい本部長は杉安君に決まったから」
「……え?」
「それじゃあ、今までお疲れ様」
「あ、あああああ」
そして彼は社長室から放り出された。最後の言葉───新しい本部長は杉安君に決まったから───はずっと彼の頭の中でリピートされていた。
「なんで……なんであいつなんかが……」
杉安と呼ばれたその人は前から優秀で、それを妬んだ康弘がよく嫌がらせをしていた。その結果降格処分までされていた人物だった。
「そ……そんな……」
その後彼は荷物を纏めて会社を出た。
会社を去る彼を見ていた社員は皆、軽蔑した視線を送っていた。
そして彼がいなくなったと聞いた社員の一部には、泣いて喜ぶ人がいたそうな。
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大月ざまぁ回②(?)でした。
まだまだ大月ざまぁ回、続くよ。
後3回くらい。
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