第20話

 そして数日が経ったある日の事だった。


 「前島、ほい」


 そう言って元村が送ってきたのはとある音声データだった。

 

 「いつの間に撮ってたのか」 


 「ああ、つい先日何気に聞いてみたらあっさり言ってくれたぜ。今のあいつの協力者は三人だな」


 「三人?」


 「ああ、俺と三上ともう一人。あいつ、本当に他校にも手を出してたんだな。後目的も一応聞いてみたけど、教えてくれなかった」


 「そうか。三上についてもっと詳しく探ってくれないか?」


 「良いぜ。他でもないお前からの頼みだ」


 弱みに漬け込む形で悪いとは思うが、仕方がない。あれ以降、元村以外謝ってくる奴はいなかった。故に、元村には贖罪の余地はあって良いと思う。彼だけだ。彼だけが謝罪に来てくれた。それが例え苦しみから逃れたいという自己中心的な考えだったとしても。それを実際に行動に起こすことはとても難しいことだと思うから。


 


 俺は貰った音声データをすぐに神功路に送ることなく、一回バックアップをこっちで取ってから送った。もしも彼女が裏切った場合に備えるためだ。彼女との会話も一応録音してあるが、使う機会が来ないことを切に願っている。

 送ってからすぐに彼女から感謝の旨の返信が届いた。その後俺は一度それを聞いてみた。貰ってから一度も聞いていないことを思い出したからだ。俺は自分の部屋でその音声データを流す。


 『なあ、お前って他にどんな奴と連んでるんだ?』


 『ん?ええっと、三上ってやつと、あんたと、後一人いるわね』


 『もう一人のやつは教えてくれないのか?』


 『別に良いじゃない。いてもいなくてもそんな変わんないし』


 『ふうん。それじゃあ、三上ってやつについて教えてくれないか?一応念のために』


 『まあ、あんたの気持ちは分かるわ。少しだけ教えてあげる。彼は当時付き合ってたんだけど、それを私が横から奪ったの。あの時の彼女さんの顔は最高だったわぁ』


 『へ、へえ。そ、そうか……』


 『それから事ある毎に言い寄ってきちゃって、相手してたらいつの間にか私の協力者?みたいなのになってたのよ』


 『そ、そうか……一応そいつとは協力できるんだな』


 『ええ。そんなとこかしらね』


 『分かった。でも忘れるなよ。俺がお前に協力してるのは』


 『噂を消す為でしょう?分かってるわよ。そこは何とかするわ』


 『ああ』


 それから数分続いてからプツっと切れた。何というか、篠崎は俺と付き合ってた時と全く別人みたいだった。やはりあの時は猫を被ってたという事なのか。あの時の告白は気が動転してたからOKしてしまったけど、今となっては後悔しかない。

 でも、なんで彼女は俺を三上と同じような扱いをしなかったのだろうか。そこがこれを聞いていて思ったことだ。彼女なら俺を手玉に取っていたから容易なはずだが……本当に俺は彼女のことを何一つ理解してなかったんだな。少しでも理解していたらあんな事を未然に防げたかもしれないのに。あんなトラウマが生まれなかったのに。しかしそれはもう後の祭りだ。今は自分ができる事をやろう。




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1月19日 一部修正を入れました。

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