第19話
「なあ、どうしてお前は元村と友達になるって決めたんだ?」
元村が謝罪してきてから二日が経って幸太郎が俺に聞いてきたことだ。確かに、自分をいじめていた奴と謝罪一つで友達になるなどおかしいと俺も思っているが、それにはいくつかの理由があった。
「ん?あいつと友達になったのは友情半分、打算半分だよ」
「というと?」
「過去の出来事というもので今俺は彼を縛ってる。要はあいつは俺に借りを作ってる状態なんだ。あんなことをして置いてはいそうですかって許すわけないだろう?元々協力者みたいなものが欲しかったんだ。確かに友達は欲しかった。当たり前だ。正直お前と二人ではきついと思ったからな。だから、これはいい機会だと思った。過去の負い目と友情という名の恩義という二つの鎖であいつを縛ったんだ。だから友達としても接するし、何かあったらあいつを使う。あいつも言ってただろ?『何かあったら何でも言え』みたいなニュアンスの事を。俺はそれを使うのさ」
「中々えげつない事考えてたんだな」
「まあね」
俺は元村に対して酷いことをしているのかも知れない。だが、それはお互い様だ。こうしないと恐らくだがこの先騙されそうな気がする。あの篠崎の時みたいに。
俺は神功路と話している間にそんな事を思い出していた。もう俺はこれ以上あんな思いをしたくない一心であんな事をした。後悔はしていない。でも俺は人として最低な事をしているのではないだろうか。悪く言えば、今回のことは元村という人間を使うという事になる。しかしこれは仕方がないだろう。彼の誠実さに漬け込むのは悪いとは思うが、今回はそれを利用させてもらう。
彼女たちとの話し合いを終えた俺はすぐに元村に連絡をした。するとすぐにOKがもらえた。理由を聞いてみると、一言で表せば“俺への感謝”だった。まあ、借りを返したいのもあるのだろう。また何でも少し前から篠崎に誘いみたいなものを受けていたらしい。それが鬱陶しかったのもあるとか。とにかく彼から協力を得られたのは良かった。それから元村にはして欲しい事を言って、早速明日から行動を始めてもらう事にした。
その後俺はすぐに神功路に連絡した。とりあえずこれで良いだろう。にしてもまさか俺がこんな事をする事になるとは思わなかった。俺は俺で、覚悟を決めないといけない。
既に俺の中にあった篠崎のイメージは崩れ去っている。そして残っているのは怒りや悲しみなど、負の感情のみだった。
もう、これで決着だ。全て終わらせる。
そして俺は─────
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