第18話
「久しぶり……だね。新谷」
俺は目の前のこの状況を呑み込められていなかった。どういうことだ?
「私が真穂ちゃんに頼んで花本さんを呼んでもらったんです」
「やっほー、お兄」
「ま、真穂……お前」
真穂が連れてきた……だと?いつの間に……
「これ以上お兄が苦しんでるのは見たくなかったし。それに吐きすぎ。少しはこっちの身にもなってほしいわぁ」
「……………………はい、すんません」
俺は素直に謝った。確かに俺はこの一年どれくらい吐いたのだろう。見当もつかない。
「さて、真穂ちゃんは先輩の隣に座って、花本先輩はこっちに座ってください」
「ほーい」
「は、はい」
そして2人が座った後を見計らって、俺は花本に頭を下げた。
「本当に申し訳なかった」
「ううん、あの時私も気が動転して誤解だといえなかったから……私もごめんなさい」
こうして面と向かって話すのは実に一年振りくらいなものだから、ちょっと新鮮だが、あの時の辛さを思い出してしまう。
それから静かな時間が続いた。俺はあの時のことを思い出してしまい、何もいえなくなってしまって。花本は俺への気まずさ故に。
何分経ったのか、突然神功路が俺たちに話しかけた。
「さて、花本先輩たちを呼んだのは他でもありません。是非協力していただきたいことがありまして」
「何でしょうか……」
「まずはこれを見てください」
そう言って、さっき俺に見せたものを2人にも見せる。
「「っ!?」」
2人とも驚いているようだ。恐らくだが、それは三上君を見たからではない。問題はその相手。
神功路が俺たちに見せたのは一本の動画。それは一組の男女が性行為をしているという、何でそんなもんを見せてくるんだと言いたいもの。しかし、映っている人が問題だった。1人は三上君。そしてもう1人は────
「まさか篠崎さんだなんて……」
花本が信じられないようなものを見るような目をしながらそう言った。
俺もさっきはマジで驚いた。
「ええ、だからこうして集まってもらったんですよ。協力してもらいたくて」
「協力?」
「ええ。この映像は私が中三の時に撮ったものなんです。先輩が高一の時ですかね。その時こっそり撮って、当時付き合っていた三上君に突き詰めました。しかし“知らん”の一点張りで私たちはそのまま有耶無耶な状態で別れたんです。私はそれが許せなくて……」
「へぇ、それで花蓮ちゃんはどうしたいんですか?」
「ちょっと考えてる事がありまして。決して先輩方にも損はしない事ですよ」
そして彼女が話した“考えてる事”を聞いた俺たちはその内容にどう処理すればいいのか戸惑っていた。
「……中々凄いことするんですね」
「花本先輩がした事と比べたらそんな大した事しないですよ。あくまでこのコミュニティの中だけなので。SNSで拡散なんて出来っこないですって」
確かに花本がした事は覚悟がいることだ。本当に凄いと思う。
すると、真穂が神功路ヘ質問した。
「それだと協力者みたいなのがいるんじゃない?なんていうのかな……スパイみたいな」
「そうだよ真穂ちゃん。この計画には協力者がいる。だから先輩方に篠崎さんに近い知り合いの方っていますかね?」
俺がパッと思いついたのがつい最近俺に謝罪してきた元村だった。確かに元村なら。それにこの様な時の為に俺は……
「元村はどうだ?」
「元村さん……その方は篠崎さんに近いのですか?」
「恐らくだけど、今思えば大月と篠崎がよく話していたのを思い出してな……そこに元村がいた気がする」
「確かにそうですね……私もそのような場面を見ました」
「なら決まりですね。元村さんに協力できるか聞いてみてください」
なんの因果だろうか。まさかこんな形で過去の精算ができるかもしれないとは。しかし、この機会だ。俺は一度過去の因縁にケリをつけないといけないのかもしれない。
「分かった」
もう俺は目を背けない。しっかりと向き合ってやる。
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