第17話
「な、何だよこれ……」
「今SNSで話題沸騰中のやつですよ。これで色々ここ周辺は騒いでるんですから」
「っ!?もしかして元村が見るなって言っていたのって……」
「元村さん?と言う方はもしかして友人ですか?」
「あ、ああ」
「なるほど……恐らくですが彼が言っていたのはこれですね。先輩がこれ以上苦しまないようにするために、見るなと忠告してくれたのでしょう。そう考えると申し訳ないことをしてしまいましたね……」
俺は目の前の動画に何故か見入ってしまっっている。これは自分にとってトラウマなはずなのに。何故か吐き気が来ることもなく、それを最初から見ることができる。そういえば俺が来る前のことは先生から全く聞かされていなかった。
これはもしかしたらトラウマを克服できるかもしれない。出来なかったとしても、俺が来る前のことを知りたい。
最近になって、俺はあの時のことを冷静に思い出すことがあった。そうしたら大体吐いていたが、それでも不自然な点がいくつもあったことを思い出していた。しかし俺はそれから目を背け続けた。怖かったからだ。あの時のことを否定することが。俺が思い出したことが真実なら、俺は噂通りの最低最悪なクズになる。だが、これ以上目を背けるわけにはいかない。
俺はその動画を見続ける。顔や背景、声などはしっかりとモザイクがかけられていたりしているが、当事者である俺はあの時の状況を鮮明に思い出していた。
『来ないで!』
『ふん、お前の彼氏は今はいないんだ。別に良いだろ』
『いや!絶対嫌!私が許すのは後にも先にも彼だけなの!だから来ないで!』
『うるせえ!』
そして目の前の動画は俺があの時見た光景になった。
─────やっぱりそうだった。あの時俺が早とちりをしていないで助けに行けば、まだ何とかなったのかもしれないのに……俺は……花本を助けなかった。
「……はは」
笑いが込み上げてくる。本当に自分は馬鹿なんだと。最低なんだと。あの時もっと冷静でいれば、こんなことにはならなかったと。
「……本当に最低だな、俺は」
「いいえ、それは違いますよ。先輩」
俺が自己嫌悪していると、神功路がそう言ってきた。
「いいや、何も違わない。俺が悪かったんだよ。あの時助けていれば、花本は苦しまずに済んだんだ」
「いいえ、あなたは悪くなかった。あの状況で冷静になれと言われる方が難しいですよ」
「……っ、それでも……俺は、あいつを……」
「何度でも言いますよ、あなたは悪くない。悪く無いんです。全てはこの大月ってクズが悪いんですから」
「…………………それでも……俺は……」
「だったら謝りに行けば良いじゃ無いですか」
「そんな簡単に行くわけ……」
「行きますよ。ほら」
「……え?」
彼女がそう言いながらとある方向へと指を指していた。
そこにいたのは─────
「久しぶり……だね。新谷」
トラウマの元凶の一人、花本沙耶香がいた。
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1月14日 一部修正を入れました。
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