第16話

(???視点)


「どうして……どうして……クソっ、クソっ、クソっ!!」


 まさかこうくるとは思わなかった。あんなこと、あまりにも危険な賭けすぎる。それをしてきやがった。結局その賭けにあの女は勝ち、私にとって最悪なこととなった。

 この先、前よりもあまり積極的に動けない……まさか元村がの元に行くなんて……あいつとは協力関係では無いにしろ、まさかこうなるとは予想できなかった。それもこれもあの動画が流れたからだ。クソっ。でも、もしかしたら、元村を駒にできるかもしれない。今彼にある悪い印象を消すとか何とか言ってやれば駒にできるかもしれない。

 安元はまだ動かせるはず……拒否したとしても、いつもの様にするだけだ。

 あいつはもうただの性欲に塗れた豚。私の奴隷同然。あいつを使って何とかしなければ。まだ元村は使えない。今使える駒がしかいないことが悔やまれる。

 

 「私だけ……私だけが全てを手に出来る……あんな女なんかじゃない。あの時偶々彼にあれを見られたけど、説明すれば、きっと理解してもらえるはず……そうよ、あの女じゃなくて、私なのよ。彼に相応しいのは私なの」


 あの女はもう一度痛い目に会わせる必要があるわね。


 「ふふっ」


 彼女は徹底的に苦しませないと。絶望した顔を見たいわぁ。愉しみだわぁ。





 ーーーーーーーー


(主人公視点)


 次の日から、徐々にクラスメイトの俺に対する意識が変わっていくのが肌で感じた。

 最初は戸惑い、それから次第に俺を見ることが少なくなっていった。恐らくだが、噂が嘘だと分かり、気まずさから目を合わせないようにしているのだろう。

 しかし高一の時に一緒だった奴らは相変わらずだった。今更変えられないのだろう。まあ俺にとっては知ったことはないが。元村以外の元クラスメイトとはこれ以上関わりたくない。





「お久しぶりです!」


 そして下校中、偶々神功路に会った。前にあった人違いの件から全く会ってなかった。同じ学校に通っているが、通学路が違かったりしていたからな。

 

「よく覚えていたな」


「ええ、真穂ちゃんから聞いてましたから」


「……妹と知り合いだったのか」


 まさか真穂の知り合いだとは……あいつからそんなこと聞かれたことなかったなあ。


「取り敢えず、あの時のお詫びをしたいのですが……」


「いや、だからもう良いってそんなん」


「でも……」


「大袈裟なんだよ。別に人違いだけでそんなこと」


「はあ。まあこれ以上無駄なのは分かってました……しかし今回はちょっと頼みたい事があって……あそこの喫茶店で話しません?」


 彼女の提案に渋々乗った俺は一緒に学校の側の喫茶店に中に入って、向かい合わせに座った。


「先輩、まずはこれを見て欲しいんです」


 そう言って彼女は自分のスマホを見せてきた。そこにあったのは───


「っ!?」


「あ、こっちの男性が前言ってた三上君です。んでもって、私の元カレでした。あの時私、三上君にこれについてまた言及したかったんですけど、先輩と間違えちゃって……もしかしたら先輩に在らぬ噂を立ててしまうと思って……未遂で終わったとはいえヤバいことをしてしまった可能性があったので、だからお詫びをしたかったんです」


 悪いがそんな事はどうでも良かった。目の前のこれに比べたらそんな事どうでも良い。でもなんで彼女がこれを持ってるのだろうか。いや、彼女は三上という幼馴染のことをと言っていた。ならば、これが原因で別れたということだろう。何でのかは知らないが。


「なので、ちょっとしたお詫びと、それから図々しいのは承知の上で頼みたい事があって、今日先輩を探してました」


「……これを見てしまった以上、俺も無関係では……いや、でも……」


「それに、今先輩は注目の的じゃないですか」


「ん?どういうことだ?」


「え?先輩知らなかったんですか?」


「何が?」


「これです」


 そう言って彼女は別の動画を見せてきた。


「────────は?」


 そこに映っていたのは、約1年前の、俺のトラウマの元凶。その一部始終だった。

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