第13話
クラスに戻り、幸太郎にあったことを話したら、
───そうか。
と、一言だけもらった。その一言にはいろんなものが詰まっているのだろう。彼は俺のいじめに巻き込まれただけなのだから。そう思うとかなり申し訳なく思う。
「済まないな。俺のいじめに巻き込んでしまって」
「いいや。恐らくだけど、たとえお前と一緒にいなかったとしても同じようになってたと思う。もしくはそれ以上か。俺は元ヤンだったからな……」
元ヤン故に舐められて暴力沙汰になったことが、一年の時は俺がいない時に多かったという。これは最近知ったことだ。
しかし彼曰く、俺と連んでいなかったらそれ以上になっていたらしい。理由は教えてくれなかった。
でも彼が友達でいてくれて本当に助かった。俺にとって恩人と言っても過言ではない。
授業が終わって元村がこっちと合流し、俺に改めて教室内で謝罪した。来てからすぐに大声で謝罪してきたもんだからいた人皆んなが驚いていた。その中で一番驚いていたのは幸太郎だった。後々聞いてみたが曰く、
『二回もお前に対して、しかも二回目は人前で謝った。いじめられる可能性があるのにそこまでするとは思わなかった。俺は最初こいつのこと“まともなやつじゃない”“ただ罪悪感から解放されたいだけのずるいやつ”だと思ってたからな』
とのことらしい。
そして俺に謝った後、幸太郎にも謝罪した。
彼は“特に気にしてなかったから別にいい”と、普通に返していた。取り敢えずこの2人の中でのいざこざは無いようで安心した。
その後俺たちは3人で一緒に下校した。時々俺たちのことをギョッとしたように見てくる人がいたが気にしないようにした。
「なあ前島、宮崎、今度隣町のラーメン屋に行かねえか?」
「ん?いいぜ。幸太郎はどうする?」
「ああ、俺も構わねえけど……」
「よし、ありがとな。ちょっとお詫びを兼ねて奢らせてくれ」
「良いのか?悪いな」
「良いんだよ。こうして友達になってくれたんだからな」
帰り道、元村と話してみると案外こいつは良い奴で、俺たちとかなり話が合う奴だった。こうして幸太郎以外の人と話すことなんてほとんどなかったからなんか新鮮だ。
主に俺たちが話すことといえば、ゲームの話なのだが意外にも彼もそのゲームをしていたりしていた。しかもかなりレベルが近く、苦労話など話題が絶えなかった。
「じゃあな」
「ああ」
「また学校で」
途中、元村と別れた。ここまで話してみて、俺の判断は間違ってなかったんだなと実感する。確かに幸太郎と過ごす日々は面白かったが、こうして元村とまだ日は経っていないものの、話したりして楽しいと感じた。2人から3人。その違いは礫然だった。
「良かったな」
幸太郎が一言、ボソッと呟いた。
その一言には喜びが入っていた。彼も俺だけと遊んだりしていたのは少し寂しかったのだろう。俺以外の初めて出来た友達。
あんな事はあったけど、こうして分かり合える事が今回分かった。
それにもしかするとこれがトラウマを克服する糸口になるのかもしれない、と何故かそんなことを考えるのだった。
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〈お知らせ〉
お正月明けということで急遽今日更新させていただきました。また、明日もいつものように更新させていただきますが、その次の更新は一月九日とさせていただきます。
理由は全体的な改稿をしたい事と、ちょっとした諸事情等があり、それに手が離せない状態だからです。
コメントでのご指摘や、自分でもおかしいなと思ったところが結構あったので、この期間でちょっと直したりしたいなと思います。
まぁ、直すか直さないかはその時の気分次第ですが。
ご理解の程、よろしくお願いします。
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