第9話

(花本沙耶香視点)


 ───今日はもう遅いから、明日の放課後にもう一度来い。


 先生にそう言われた私は素直に家に帰った。

 私の中にあったのは、どこか納得した気持ちだった。


 家に着いて、いつものように風呂に入る。

 風呂に入った後、妊娠検査薬を使う。あの日からいつものようにやっていることだ。あの男のものが入っていないか確認するためでもあった。


「……ふう」


 結果はいつものように陰性。これを見るだけで少しは安心する。

 でも、もしかしたら妊娠しているのかもというこの不安は一年以上経った今でも拭いきれない。あの男の子供を産むのだけは嫌だった。

 それに、あの男が初めてだったなんて……っ。初めては彼が良かったのに……っ。

 強姦された上に妊娠させられるなんて、それだけは、嫌だった。







 次の日の放課後に、昨日と同じように先生の元を訪ねた。


「失礼します」


「約束通り来たな。それじゃあ、座ってくれ。昨日言った理由を話そう」


 先生に言われた通りに目の前の椅子に座る。心なしか、先生はどこか楽しそうに見える。何故だろう?


「さて、まず昨日の理由についてだが、被害届は出しても受理されないと思ったからだ」


「……何故ですか?証拠も先生が持ってますよね?」


「証拠があっても信憑性が低くなるんだよ、一年以上経ってしまっては。たとえそれが私が持っているようなやつみたいに決定的でもな。しかも、受理しても恐らくだがかなり時間が掛かる。それだと高校生のうちにしたいだろうお前にとっては不本意だろう。それに、おそらく学校側が揉み消してくる。そうなれば、お前も大月見たく転校させられる可能性がある」


「そ、そんな……」


 証拠があるのに、受理されないなんて……でも確かに考えてみれば、一年も経っていれば確かに信憑性は薄い。早めに被害届を出さなかった自分が恨めしい。あの時ショックで引きこもらなければ……

 私は悔しさに思わず下を向いた。これ以上のやり方なんてあるの?いいや、ない。新谷にとっても、そして私にとってもあの大月に最高の仕返しが出来ない。それに、これじゃあ、彼が一番救われない。

 私は既に諦めかけていた。そして諦めかけている自分に対し、嫌気が差した。まだ諦めたくない……でも……


「でもな」


 その言葉で、下を向いていた私は先生の方を向く。


「一つ方法はある」


 もう無理だと思っていた私に対して先生は。


「あれには私もイラついてたんだ。学校側に対しても、そして、大月に対しても。あれは教員人生のなかで一番ムカついたからな。勝ち逃げされたあれには。だから、スッキリさせたい。そして考えた、とびっきりのいいやつがあるんだが」


 獰猛な笑みを浮かべて。


「やるか?」


 私に、そう提案したのだ。





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 コメント毎度見させてもらってます!いつもありがとうございます!

 しかし、今後忙しくなりそうなので返信できない可能性が出てきます。

 了承の程よろしくお願いします。

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