第7話

 ……はあ。授業中なのに、嫌な事を思い出してしまった。

 あの一連の出来事は、1年以上経った今でも偶にトラウマとして夢に出てくる。

 特に、花本と大月が……っ、これ以上は駄目だ。


 花本とはあれ以降話したりしたことが無い。主に俺が彼女から避けているだけだが。

 まぁ、向こうも俺の事を避けてるらしいから、殆ど会うことがない。だから話すことも無い。


 そう考えるとあの時の篠崎の言葉は嬉しかったなぁ。まぁ裏切られてその分キツかったが。

 でも今朝の様子からして、何かありそうだがもうそんなことは知らないな。聞いてもいいけど、もう多分あの時の様な感情にはならないだろうな。

 もう既に俺の心は何も映さなくなったのかもしれない。



 ───あの時の様に恋ができない。


 ───あの時の様に誰かを好きになれない。



 無意識に傷付くのを恐れている事がわかる。

 また女子から傷付けられるって、心が、そう訴えている。

 ──もうこの事を考えるのを辞めにしよう。自分が変になりそうだ。




 ─── でもこれだけは信じて!私はまだあなたのことが……




 を見せられて、俺はあんたの何を信じればいいんだよ。







 俺は家に帰ると、おもむろにパソコンを開いた。そして保存していた写真を消した。篠崎との思い出、全て。もう必要ないからな。

 そして、パソコンの電源を切って次にスマホを開いて、先程同様、彼女と一緒に写っている写真を全て消した。

 もうこれであの日々は全て過去になった。あれは青春の1ページとなっていずれ記憶から消えるだろう。いや、もうさっさと消えて欲しい。

 あのところを見てしまったら、もうそう思ってもおかしくないだろう。


「ふぅ……」


 一息ついて心を落ち着かせ、俺は勉強を始めた。

 まだ忘れられていない。俺はその記憶から逃げるように、一心不乱に勉強にのめり込んだ。



 それから3時間休憩なしで勉強を続けた。

 流石に体は疲れていたらしく、俺は部屋を出て風呂に入り晩飯の準備をした。

 そして作り終えた時にはもう19時を回っているところだった。


「ただいま〜」


「おかえり、真穂」


 丁度俺の妹の真穂が帰って来たみたいだ。

 彼女は同じ高校の一年で、テニス部に入っていていつもこのくらいの時間に帰ってくる。


「お兄、大丈夫?また去年みたいなことされたんでしょ?もう噂がこっちまで来てたよ」


「そうか、でも大丈夫だ。もう割り切った」


「そうは見えないけど……」


「とにかく、お前はまずは風呂に入ってこい」


「……分かった」


 そう返事をすると、真穂は自分の部屋に戻っていった。

 彼女は去年の俺の酷かった時のことを一番よく知っている。何気に心配してくれているのだ。俺にとってはそれがちょっと嬉しかったりする。こんな風に優しくしてもらえるやつは、真穂と幸太郎しかいない。やっぱりそれが、ちょっと寂しい。

 いつか、そんな人が来てくれるだろうか。




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〈お知らせ〉

 1話を少し修正しました。

 おかしかったところがあったので。

 申し訳ございません。


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