第6話
俺は今の状況に戸惑っている。
前よりかは俺と他の奴らとの関係はマシになっているとはいえ、まだ俺に対して風当たりが強い奴は少なくない。主に女子が。
なのに目の前のこいつは俺に告白してきやがった。
「何でだ?言っちゃあ悪いが、俺は悪い意味で目立ってるんだぞ?そしたらお前も何されるか分かったもんじゃないんだ」
「それでも、よ」
「どうして、なんだ?」
「それは……」
目の前の篠崎さんは、凛とした印象で学校で美人だと噂されていた人だ。目の前でよく見ると噂通りの人だと分かる。
だからこそ、俺に告白した理由がわからない。
「…………たからよ」
「え?」
「前に助けられたときに、カッコいいと思ったから!それでいい!?」
曰く、高一の時に俺は彼女の事を何処かで助けたとか何とか。その時に一目惚れをしたが、まだ噂が飛び交っていた時だったので、あまり近付けなかったから、今になって告白した、と言う訳らしい。
てか助けたっけ?全く覚えてねえな。
「……成程それは」
「……何も言わないで」
自分で理由を聞いては何だが、目の前で照れてる姿はとても可愛い。いつもの雰囲気とはかなりかけ離れている。
「……で、どうなのよ」
……最初は断ろうと思っていたが、照れながらも真剣な表情をしている彼女を見てると、断りづらい。
「……分かった。いいよ」
「〜〜〜〜っ!!」
俺が返事をすると、彼女は全身で喜びを表していた。飛び跳ねたり、顔がにやけていたり。
そして、急に俺の方を向いて顔を近付けて来た。
「そ、それじゃあ…き、今日からあなたは、私の彼氏、でいいのよね?」
「そ、そうだけど」
ものすごい圧をかけられているみたいだ。か、顔が近い……
そしてその言葉に満足したのか、顔を戻して俺に抱きついてきた。
───え?
「ち、ちょ!?」
「私達付き合ってるんだからこれくらいいいでしょ?」
「で、でも早すぎないか!?」
「いずれする事を前倒ししただけよ」
「そ、それはそうだけど」
「私が支えてあげる」
急なその言葉に俺は言葉を失った。
「私が、その悲しみを、苦しみを、少しでも和らげてあげる。それが今のあなたに必要だから。あなたがあの事件でどんなに傷付いたのか、私は知らない。でも、少しでもその傷を癒すことはできると思うわ。だから、私に甘えて?」
それはあまりに身勝手で、人によれば自意識過剰に取られないその言動は、今の俺には、心の奥まで沁みた。
そうか、俺は無意識にこの苦しみを癒してくれる人を探していたのかもしれない。過去に失った愛を、俺は無意識に欲していたのかもしれない。だから花本に対し、失いたく無かったが為にかなり気を遣っていたのかもしれない。
「……ありがとう」
小さな声で、無意識にでたその感謝の言葉は、彼女に聞こえたのだろうか知らないが、さっきよりも抱きしめる力が強まった気がした。
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〈お知らせ〉
3話と5話を少し修正しました。
ちょっとおかしな点があったので。
結構重要なところだったので変えさせていただきました。
申し訳ございません。
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