第5話
どうせそうなるんだろうな、とは思っていた。でも、分かっていても、来るものはあった。
周りには俺のことを侮蔑する視線。当たり前だ。噂で俺は悪者扱い。真実を知る者が意図的に嘘を流す。何も普通に起きるものだった。要は、いじめ、だろう。
書いているものは“最低”、“クズ”、“○んじまえよ”などなど……まあ、短時間でよく書けるもんだ。
「済まないな、新谷。俺が戻った時にはもう……」
「いいよ。予想できたことだし」
予想できてもこれは結構キツい。こんな心ない言葉が簡単に俺の心を切り裂いてくるもんだから、キツいったらありゃしない。
「それよりも、幸太郎の方こそ、大丈夫なのか?」
「俺か?俺は元々……あれだし……な?」
「……そうだったな」
幸太郎は元ヤンらしく、それが広まったことで周りから距離を置かれている。
俺は席が近かったことがあり、よく話すことが多く、その中で彼は優しい人だと言う事がわかった。俺たちはすぐに友達になり、よく遊ぶ様になったのだ。
「でも、これは俺に向けられる以上のものだぞ。大丈夫か?」
「問題無い。おそらくだけど、もうすぐで先生が解決してくれるはずだ」
「そうか」
俺はこの落書きをそのままにし、授業を受けた。
今思えば、既に俺の心は壊れかけていたのかもしれない。
それから桃萱先生が色々調査した結果、一連の噂は大月によるものだと判明した。
その事が分かり、大月は一生徒のいじめを促したとして生徒指導を受けた。先生はそれを会議で取り扱ったが、学校側はこの一連の流れをいじめと認定しなかった上に、そもそもこれらは無かったものとした。
それもそうだろう。学校はこのことを公に晒したくなかったからな。幸か不幸か、この流れは大月を擁護したようなものとなった。
それから大月は転校した。が、それでも俺に対する風当たりは強いままだ。その時には既に“前島新谷は最低なクズ”という固定観念が定着したからだ。
お陰でいつも絡むのは幸太郎のみ。誰も俺たちに近付かない。嫌がらせもしない。いないものとして扱われた。
みんな怖がっているのだ。俺らと関わって仲間外れにされるのが。故に近付かない。
そして一連の渦中にいた花本は俺が先生に呼ばれた日の三日後に学校に来る様になった。
俺はあいつが今どう過ごしているのか分からない。何故か登校し始めて数日の間は俺のクラスの近くを彷徨いてたけど、何でだろうか。
それから一年が経って、俺に対する風当たりが弱まったところで───
「わ、私と付き合ってもらえないかしら」
何故か告白を受けていた。
それが二人目の彼女、篠崎莉緒との始まりだった。
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12月21日 修整を入れました
1月8日 修正を入れました
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