第4話

 一週間後、俺は久々に登校した。

 学校について、教室に入ると中にいた全員が驚いた様子で俺を見ていた。

 俺は自分の席に着いた。すると、俺の後ろの席の幸太郎が話しかけてきた。


「おい、大丈夫か?今学校中で噂になってるぞ?」


「……ああ、俺らが別れたってやつか?」


「ああ、?」


「───は?」


「“は?”じゃなくて、本当なのか?」


「何言ってんだ?んなわけないだろ」


「でもその噂で持ちきりだぜ?今。何でもお前が一週間前に花本さんを罵ってそのまま別れたって、そうなってるけど」


 何でそうなってるんだ?意味がわからない。振ったのはあいつの方だろ?

 それに傷付けたのは向こうだろ。


「噂の出は知ってるか?」


「ん?ああ、大月だよ。あいつがそう言い始めたらしい」


 大月。確か、俺と同じクラスの……っ!?

 まさか、あの時の……あの日の、花本の今の彼氏の……


「……そうか。幸太郎ちょっと手を貸してくれ。吐きそう」


「は!?ち、ちょっとそれは早く言えよ!?」


 そして俺らはトイレに駆け込み、俺は吐いた。


「うっ……」


「本当にどうしちまったんだよ。急に吐くなんて……」


「すまない、さっきの話を聞いて少しトラウマを思い出してしまってな……」


「トラウマで吐くって、それは少しどころじゃねえぞ!?何があったんだ?」


 それから俺は一週間前にあったことを全て話した。話すことで少し楽なると思ったからだ。


「……そうか。それは……何というか……」


「言うな。情けはいらない。俺が悪かったんだ。俺が……」


「そんなわけねえだろ!その話を聞いたら明らかに向こうが悪い!」


「ありがとうな……本当に」


「……何、気にするな。そうか……でも、何で?」


「休んでる、だと?」


「ああ、今日も来てないぞ?」


「何で来てないんだ?」


「知らん」


「そうか……」


 何で学校に来てないんだ?あいつは新しい彼氏と仲良くヤってるんじゃなかったのか?

 その時、放送が鳴った。


『一年三組、前島新谷、至急職員室に来る様に』


 ───は?


「何で……」


「多分噂の件だろうな。俺もついていってやるよ」


「……ありがとう」


 俺たちは職員室に行った。

 そして生徒指導室に入らされた。

 目の前には俺のクラスの担任、桃萱瞳先生がいた。


「座って」


「……はい」


「宮崎君は教室に戻っていなさい」


「しかし……」


「幸太郎、ありがとう。俺は大丈夫だ」


「……分かった」


 幸太郎は生徒指導室を出て行った。

 それを見送った俺は正面を向いた。


「さて、前島君、呼ばれた理由は、分かるね?」


「はい」


「君が花本さんを振ったのは本当なのかい?」


「いいえ。違います」


「でも学校中では君が振ったとなっているが?」


「俺は振っていません。振ったのはむしろ……っ!?うっ……!?」


「っ!?どうしたんだい!?」


「すみません、ビニール袋、ありますか……うっ!?」


「あ、ああ」


 俺はまた吐きそうになった。思い出す度にこれでは……本当に自分のメンタルの弱さにつくづく嫌になる。


「どうしたんだい?急に吐くなんて……」


「……思い出したからです。一週前の出来事を」


「それだけでこんなに……」


「それだけって、何ですか」


「え?」


「それだけって……あれは、そんな軽いもので済むものじゃない……あれは……」


「……話を、聞かせてくれないか」


「……はい」


 そして俺はあの時起きたことを幸太郎に説明したのと同じことを先生に話した。


「……そうか……そんなことが……噂の出は大月で、君の彼女と性行為をしていたのも彼……俄かには信じられないが……」


「俺のクラス近くの監視カメラを確認すれば分かると思いますが」


 俺の学校は私立校で、防犯として各教室の入り口付近に防犯カメラが設置されてある。俺はいたところは丁度防犯カメラがあったはずだ。しかも、角度的に中も見れたはず。


「……分かった。それは今度確認しよう。経緯は分かった。では何故、花本は休んでいるんだい?」


「それこそ知りませんよ。俺は振られたんだ。連絡はしていない」


「……そうか。ちょっと君の携帯を確認してみてくれ」


「?はい」


 そう言われて確認してみると───


「っ!?」


 花本から大量の通知が来ていた。

 その殆どが謝罪文だった。


「これは……」


「ちょっと見せてくれ」


 そう言われ、先生に携帯を見せる。

 そしてそれを見た先生は徐々に表情を険しくしていく。


「成程……大月が流した噂と前島の話、そしてこの大量の謝罪文……あとは証拠だが、これは監視カメラで問題無い……」


「先生……」


 先生がまるで探偵みたいだ。

 まあ、実際先生はものすごく頭がいい。有名な国公立大学出身だからな。

 その先生がどうやら結論を出したようだ。


「ありがとう。お陰で何とかなりそうだ。このメールは一応写真に収めたいのだが……」


「はい、どうぞ」


「ありがとう」


 そう言って先生は自分の携帯で俺の携帯の画面の写真を撮った。

 そして先生は俺に携帯を返した。


「前島。これで以上だ。退出しても構わない」


「はい、ありがとうございます」


 丁度休み時間になったので、俺は立ち上がり生徒指導室を出た。そして教室に戻った俺が見たのは、ある意味予想できたものだった。


「はあ」


 俺の机に落書きされていたのだ。


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