一章
第1話
「その人とうまくやれよ。それじゃあ、さよなら」
「ちょっ……!」
俺は目の前の彼女にそう告げると、逃げるように屋上から去った。
ああ、またこうなるなんてな。さっきの光景を見た時、あのトラウマが甦りそうだった。
いい感じだと思ったんだけどな。こんな感じで捨てられたのは二回目だ。
俺───
家に帰り、俺はベッドに倒れ込んだ。同じようなことは一度あったのにやっぱり辛いものは辛い。しかも、二回目だからこそその辛さはより増していく。
俺はついさっき、学校の屋上で俺の彼女である
その光景は一年前、丁度、元カノで俺にとって人生始めての彼女だった
───俺の彼女が他の男と肉体関係を持った瞬間を。
あの時は放課後だったが今回は昼休みだった。時間は違えど受けたショックはほとんど大差ない。
こんな感じで振られるのなら、もうこれ以上彼女を作らない方がいいのだろうか……?俺にとって彼女を作るということはこんなに苦しい気持ちになるだけなのか……?
……もうこれ以上裏切られたくない。どうせあんな形で別れるのなら、最初から彼女を作らない方がマシだ。
───もしかしたら、俺の家がある程度お金を持っていたからか?だから彼女達は俺に近づいたのか?自慢じゃないが、俺の親父はまあまあ稼ぎがいい。そのお陰でなんとか母さんがいなくても親父と俺と妹の3人でやって行けている。まさか本当にそうなのか?
さっきからそんな疑問が浮かび、そして消えていく。
自分の部屋に入って直ぐに泣いていた俺だが、しばらく経つと泣き疲れたのか、もう涙が出なくなった。それに気付いたと同時に、ある考えが浮かんできた。
───二度あることは三度ある。ならば、もうこれ以上近づいてくる女性は信じちゃダメだ。
できた彼女に失望されないようにいろんな人からアドバイスをしてもらったり、色々調べてみたりして自分なりに頑張って、彼女にもっと好きになってもらえるように頑張ったつもりだった。でも結局こうして捨てられる。俺の頑張りはあくまで“つもり”だったんだ。
───人並みに恋愛なんて、俺には無理だったんだ。
「うっ……」
さっきのことを思い出して吐き気がした。俺はトイレに駆け込み胃の中のものを全て吐き出す。もう既にトラウマになっていた。
もうこれ以上あいつらを思い出したくない。
それから俺は高熱を出したことにして学校を三日休んだ。今の酷い状態で学校なんか行けるはずも無かった。時々妹の真穂が見に来てくれたが直ぐに戻っていた。
そして四日後、俺は再び学校に通い始めた。この休みの間に俺は一つの答えを出していた。
───恋愛はもうしない方がいい。
青春やら、何やら、もうそれらはどうだっていい。俺は俺の心を守るためにそれを捨てることにした。
二度あることは三度ある。
───もう俺は、間違えない。
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12月22日 修正を入れました。
12月24日 修正を入れました。
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