第2章 祐二

これでいいだろう、ふふふ。

夜中にパソコンに向かっていた祐二がニヤリとした。

たった今、アマゾンで、フュアーハンドのオイルランタンをポチったところだった。

前からこのオイルランタンが欲しくて仕方がなかったのだが、既にいくつもランタンは持っていた。ホームセンターで買ったLEDタイプのもの、百均で買った小さい卓上タイプ、懐中電灯としても使えるTWO WAYタイプのもの。

いずれも実用には全く問題がなく、これから先も問題にはなりそうになかった。

万が一壊れても、似たようなものが同じぐらいの値段で手に入る。

ただ美しくない、それだけだ。

アウトドア雑誌やSNSの投稿写真を見て、俺もこんなかっこいいキャンプがしたい、とは思うものの、既に和美と二人分の装備は十分揃っていた。

和美は、絶対許してくれないだろうな。

祐二は和美に内緒で買うことを決めた。ただ、普通に買って自宅に届けてもらったのでは、すぐにバレる。

そこで祐二が考えた作戦がこうだ。

まず、送り先は恭平のところにする。恭平というのは和美の弟だ。

恭平は山梨の実家から地元の大学に通っていたのだが、この春無事に就職先が決まって、都内のアパートで一人暮らしを始めていた。

荷物が届く前にあらかじめ恭平に電話して受け取っておいてもらう。

もちろん恭平には、このことは和美には内緒で、と口止めをしておく。

祐二と和美が結婚した頃、まだ小学生だった恭平にとっては、祐二は理想のアニキだった。祐二も恭平をキャンプやサッカー観戦や都内のライブハウスでのロックコンサートに連れて行ったりと、可愛がっていた。

夜中にライブハウスから帰ってきて、その興奮のまま二人で大声でシャウトしている姿を見て、和美は、男ってガキね、と呆れながらも、どこか嬉しそうだった。

そんな恭平だから、祐二が頼めば、喜んで引き受けてくれるだろう。

しかるべき折を見て恭平のところに回収に行く。

そして、あたかもずっと以前から持っていたけど使ってなかった、という体を装えば、和美は信じるだろう。

自分の細工に満足した祐二は、もう一度、ふふふ、と笑った。


(第3章へ続く)

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