繋がる線と線・・・2

《よくわかったね》


車から感心したような声が聞こえてくる。

その言葉に「いえ。 是非ウチでもその力をふるって欲しいです」と冷静に答える麗珠。

その様子をチラリと見る赤沼。


「すいませんが、経営者同士の心理戦はまた今度でお願いします」


見かねた英がそう告げる。

その言葉に同意するように《東雲英の言う通りだよ。 あ、100m先の信号右折ね》と合わせてホワイトハッカーが答える。


「名前を知ってることについてはつっこみません」

《それがいいよ。 お母さんにも内緒にしてるみたいだしね》

「…絶対に言わないでください」

《無事に妹を救ってくれたらね》

「くそが」

《何とでも。 でも、大事にしている家族だからこそ心配するんだよ。 特にこんな事件はね》

「…」


ハッカーの言葉に英を唇を噛む。


成田陰敏なりたかげとしにも家族がいた》

「は?」

《東雲英と同じく彼は片親だった。 五歳の時に母親を亡くし、父親の手によって育てられた。 父親はとても厳しく彼を育てたらしい。 何度も病院に通っている記録が残っている。 知ってる? 螺旋骨折らせんこっせつって虐待の典型的な怪我の一つらしいよ》

「なんで、そんな、急に…」

《東雲英。 君は知ってる。 情報がいかに大事か。 知能がどれほど役に立つか。 誰から君に彼の情報を与えようと思った。 そうすれば妹が、有が助かる確率があがる。 私はそこにいけないから。 だから、妹を頼んだよ》


その言葉にハっとする。

自分が母を大事にしているようにこの人は妹大事にしている。

だからこそ脅しをかけたんだ。

母親に言われたくなければ、妹を助けろと。

その変わり使えるものは何でも使っていい。 私さえも道具にしてしまえと。

そう彼女は英に言ったのだ。

顔も見たことのない彼女に期待されている。

その事実が英の不安な気持ちを上回る勇気をくれた。


「なら、その分情報が欲しい」

《なんの?》

「成田陰敏の全ての情報。 それから貴方の妹とその彼氏の情報を」

《分かった》


二人の会話を聞きながら麗珠は驚いたように「何をする気なの?」と声をかける。

英は麗珠の方を真っ直ぐ見つめ口を開いた。


「私が成田と交渉する」

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