捜査は足と頭で…8

「そんなことになるって知ってたら、あの時無理矢理にでもつれだしたのに… 」

「…葉知さん」

「あの時とはもしかして塚本さんあの現場にいたんですか?」


加賀のその質問に乾いた笑いを浮かべる。


「はい。 あの日浪漫喫茶に行きました。 百合の婚約者を一目見る為に」

「婚約者?」

「知らなかったんですか? それも無理もないかもしれないですね。 百合はやたらと隠してましたから。 知ってるとしたら百合の家族ぐらいですかね」

「その婚約者というのは?」

「知りません。 名前も外見も」

「聴かなかったんですか?」

「聴きましたよ。 写真はないか、どういう人なのか。 でも百合は一度も教えてくれませんでした。 でも婚約者になったから早くウチに紹介したいって。 あの日はウチに紹介してもいいかお願いするための待ち合わせでした」

「それを館川百合から聞いていたから浪漫喫茶に行ったんですね」


葉知は乾いた表情のまま頷く。


「婚約者の姿は見たんですか?」

「見てないですよ。 ウチに気づかない百合に嫌気がさしてすぐに浪漫喫茶をあとにしましたから」

「気づかないぐらいで?」


池山がつい口をはさむと葉知はギロっと睨みつけるように池山に視線を送る。

その視線の圧に池山は「すいません」といい頭を下げた。


「百合の好きなキャラクターのコスプレをしていったんです。 それで気づかなかったから腹がたったんです」

「まさか薔薇園ルイの!?」

「知ってたんですか?」

「その特徴に当てはまる人物を見かけたと証言がありましたから」

「あぁ。 彼女も知ってましたしね」

「…それで館川百合に一度も接触することもなく店をでたということですね?」

「はい。 店でテイクアウトだけして」

「なるほど。 貴重なご意見ありがとうございます」

「いえ…」

「それではこれで失礼します。 阿澄さんもありがとうございます」

「いいえ。 お役に立てず申し訳ありません」


申し訳なさそうにする阿澄に加賀が「それでは失礼します」と言いかける。

その瞬間葉知が加賀に向かって口を開く。


「…もし他殺で、もし犯人が分かったらウチに教えてもらうことできますか?」

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