東雲英の事情聴取…2

「スーツの茶髪の男性に見覚えはあるかい?」


英は少し考えるように、顎に手を添えた。

今まで即答だった彼女の違う行動に刑事二人の期待は募る。


「…見た気がする」

「どんな男性だったかい?」

「そこまでは…。後ろ姿をチラっと見ただけだと思う」

「だと思う?」

「スーツの茶髪の男性が他にいたかもしれないから」


彼女の発言に二人の刑事は頷いた。

確かに浪漫喫茶に来る人はスーツでない人が多い。だがスーツで来店する人もいるのだ。その中に茶髪の男性がいる可能性だって勿論ある。


「では東雲さんが見た男性の特徴を教えてくれるかな?」

「…スーツはグレーで、髪の毛を後ろで結んでいたきがする。でもちょっとしか見てないからあってるかは不安だけど」


加賀は手帳にはグレーと髪の毛を結ぶと書かれ更に丸を付けたした。


「あ」

「何か思い出したかい?」

愛充あいみだ」

「愛充さん?」

「愛充がそのグレースーツを接客してた」

「愛充さんって第一発見者の?」

「そう」

「それ以外は思い出したことあるかい?」

「特には」

「なるほど。ありがとうね。じゃあ最後にこの書類を書いてもらってもいいかな?」


彼女はサラサラの黒髪を揺らして頷き、スラスラと綺麗な文字で書いていく。


「左利きなんだね」

「え?」

「いやー、千金楽さんも左利きだったから。昔は珍しいと思ったけど、結構いるもんだね。左利きって」

「あー、でも私と麗珠だけ。あとは右利き」

「やっぱりそうなんだ。右利きに強制されなかったの?」

「…関係ある?」

「ごめんね。オジサンそういうの気になっちゃうんだ」

「ご飯食べるときは右。文字書くのは左」

「なるほど」


サラサラ書いていたペンが止まり「もういい?」と加賀に声をかけた。


「うん。大丈夫だよ。またお話聞くかもしれないから、そのときはよろしく頼むね」


彼女は加賀の言葉に頷くと会議室を後にした。

池山は彼女が書いた調書を手に取り読みだした。


「流石現役女子高校生!千金楽さんのときも思いましたけど纏めるの上手ですよね」

「あの二人は名門校だからな。特に、さっきの子はあの家政かせい大学付属高等学校だぞ。なにも言わなかったが、自分が容疑者の一人であることを理解している」

「その上で黙ってたんですか!?ただの女子高校生が!?」

「お前の女子高校生のイメージはなんなんだよ…」


加賀は池山の発言に何度目かの溜め息をはいた。

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