東雲英の事情聴取…1

━東雲英の事情聴取調書


「東雲英さんバイト帰りに申し訳ないね。ちょっと先日の件でお聞きしたいことがあってね」

「…貴方が加賀さん?」

「如何にも」

「そ。じゃあ早く始めましょう」


英は面倒だと思っている態度を隠そうともせず、眼鏡をいじりながら椅子に座った。


「八月一日のことを思い出して欲しいだけどね」

「…あぁ」

「何か変わったことはなかったかな?」

「ない」

「随分ハッキリしてるね」

「変わったことなんて女性が倒れていたことだけ」

「なるほど。ではその女性が注文したメニューは知っているのかな?」

「知らない」


加賀の質問に全て即答する英に、池山は無意識に貧乏ゆすりをしてしまう。

そんな彼の姿を横目でみた加賀は小さく溜め息をはく。その様子を一度も瞬きせずに見つめる彼女に、気まずさからか二人は咳ばらいをした。


「池山がごめんね。悪気はないから」

「気にしてないので、早く終わらせましょ」

「どうしてメニューが分からないのかな?」

「何卓の注文かは分かるけど、そこに誰が座っているかなんてキッチンからは見えないから」

「なるほど。じゃあ何卓に座っていたか分かれば、メニューも分かると?」

「…あれから何日経ってると思ってるの?」

「今日が八月五日だから四日前の話になるかな?…覚えてない?」

「えぇ」


当たり前という顔で頷く彼女に、加賀は別の質問をし始める。

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