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ミイラ男
「……あ、リリ!良かったまだ居たんだね!」
魔女
「あら、帰ってきたの?あのジョシュ君は?」
ミイラ男
「あいつも居るよ、友達紹介してくれるんだってさ、一緒に飲もうよ!」
リリを引き連れ「クリスー!」と名前を呼ばれた方に行くと、テーブル席でジョシュアがこちらに向かって手を振っている。
ドラキュラ
「こいつが狼男のウェア、もう一人居るんだけど今ちょっとトイレ行ってる。」
魔女
「魔女のリリよ、よろしくね。」
ミイラ男
「クリスだよ。」
クリスがジョシュアの隣に、そしてリリがウェアの隣に座り、四人は互いに握手を交わした。ウェイターに各々飲みたい物を注文し、ジョシュがリーパーの分のビールもついでに頼んだ。
狼男
「よく顔を見たことはあったけど、いつも誰かと居たから中々話し掛けられなくてさぁ~。」
魔女
「なぁーんだイケメン君ならいつでもお持ち帰りOKよ?」
ミイラ男
「早い早い、先にナンパさせてあげて(笑)」
ドラキュラ
「おいウェア、お前焦って噛みつくなよ。犬と違ってこっちの世界には順序ってのがあるからね。」
狼男
「犬じゃなくて狼ですぅー。」
盛り上がっている所に、トイレから帰ってきたリーパーが合流した。
死神
「わりぃわりぃ!ちょっとトイレ混んでてさ……」
知り合いなのだろうか?魔女とリーパーが驚いた表情で互いの顔を見つめ合っている。
死神
「何でお前がいるんだよ。」
魔女
「……こっちのセリフよ!」
狼男
「……知り合いだったの?」
ジョシュアとクリスが不思議そうに顔を見合わせ、お互いに肩をすくめた。
ミイラ男
「………昔付き合ってた?!昔って、いつ頃?」
死神
「300年ぐらい前か?」
魔女
「320年前Death《デス》!」
リリが目をかっ開いて突っ掛かるようにそう言った。
死神
「何それ……死神と掛けてんの?全く面白くないからね。」
狼男
「……なんだよ、俺ちょっと狙ってたのに……」
ドラキュラ
「てかさっきクリスの隣に座ってたのに気付かなかったのお前?」
死神
「見た目がコロコロ変わんだよこいつは。前は金髪ストレートだったし……あっちの方が俺は好みだったなー。」
魔女
「付き合ってる男の好みに合わせてるのよ。」
狼男
「ぇえ!じゃあ今好きな人居るの??」
魔女
「まぁね。」
狼男
「はぁ……やっぱり脈無しかぁ……。」
そう言ってしょぼんと耳を下げるウェアの前髪をチネりながらリーパーが言った。
死神
「……俺が慰めてやろうか?ん?」
狼男
「っだぁ触んな!悪運が移る!!(怒)」
死神
「キャンキャン鳴くなこの負け犬が。」
腹を抱えて笑うクリスとジョシュアの向かいで、リリは額を擦りながら呆れた顔をしている。
ミイラ男
「で、好きな人ってどんな人なの?」
魔女
「もちろん、イケメン!」
死神
「しょーもな。」
狼男
「……あれ、何?リーパーさん妬いてるんすかー?」
そんな冷やかしを言ったウェアの耳をリーパーが引っ張る。「あぃたたた!…てめぇこの野郎!」ウェアがリーパーの手に噛みついた。「放せ馬鹿犬!!」仲良く口喧嘩している二人の向かい側で、リーパーをじーっと見つめるクリスがジョシュアに話し掛けた。
ミイラ男
「リリって生粋の面食いじゃん?ってことは……リーパーって凄くイケメンなの?いっつもお面被ってるから気になる!」
前から何度か街で見かけたことはあったが、何と言ってもその全身黒ずくめの恰好と不気味なお面のお陰で話し掛けるどころか近寄ることさへも避けてきた。
ドラキュラ
「あぁ、まぁカッコいい方じゃない?」
その会話を聞いていたウェアが、リーパーのお面を外そうと手を伸ばす……。
死神
「触んな、寿命縮めるぞ。」
狼男
「うわ、陰険!」
ミイラ男
「え、そんな事できるの……?」
死神
「当たり前だろ、俺を誰だと思ってんだよ。」
サラっとそう言いビールを飲む、どこまでも謎に包まれた男。その髪は何色なのだろうか?目の色は?死神というほどだから骸骨のような見た目なのだろうか……考えれば考えるほどその素顔が気になる。だがそれと同時に、自分の命も簡単に取られてしまうのではないかと不安になる。
ドラキュラ
「ちょっと、俺のクリス君をそんなに怖がらせないでくれる?」
その言葉に、言った本人以外の全員が手を止めた。
狼男
「お前のクリス君……?」
「うそだろ……」とリーパーがジョッキを置き、呆れて片手で顔を覆う。
魔女
「ちょっと……責任取ってくれとは言ったけど、そこまでしろとは言ってないわよ!この子に何したのあんた?!」
ドラキュラ
「え?何って……」
責め立てられる中、ジョシュアがクリスを見つめる。
ミイラ男
「な、別に何もしてねぇよ!俺らはただ話し……」
ドラキュラ
「キスした。」
ミイラ男
「おまっ………!!」
明らかにショックを受けている三人を眺めながら、ジョシュアは「ん~旨い。」とワインを嗜む。そんな彼の着ているシャツの襟をガシっと掴み、クリスが言った。
ミイラ男
「お前ってバカなの??何で言うかな、こんな……みんなの前で!!(怒)」
ジョシュアは動じず、襟を掴まれたまま顔を傾けワインを飲み続ける。「聞いてんのかよ!」と騒ぐクリスの唇をじーっと見つめると、軽く口付けをした。
ミイラ男
「………!」
死神、魔女、狼男
「…………!!!」
三人の前で堂々とクリスに口付けをしたジョシュアは何事も無かったようにワインを飲む。衝撃の瞬間を目の当たりにしてしまった親友二人が呆れた顔をした。
死神
「酒がまずくなるだろ、やめろ!(怒)」
狼男
「うーわ、ガチかよ……。」
魔女
「でも何だか、お似合いじゃない?」
完全に機嫌を損ねたクリスはジョシュアと目を合わせようともしない。ツンツンとつつくジョシュアの手を鬱陶しそうに払い続ける。
ドラキュラ
「……何でそんなに気にすんの?俺周りなんか全く気にならないんだけど。」
そんなジョシュアの発言に、全員が「だろうね!!」と口を揃えて言った。
ミイラ男
「もうジョシュなんか嫌い!!」
ドラキュラ
「……うわ、傷付くー。」
死神
「はぁ……ダメだ、今日の酒はちっとも旨くない……何か悪酔いしそう。」
魔女
「私、そろそろ行くわね。」
ミイラ男
「リリ……もしかして、引いた?」
魔女
「ん?何が?あんたとジョシュの事?」
ミイラ男
「………うん。」
気まずそうにリリと話すクリスを見つめるジョシュア。惚れた相手が同性だという事が、それ程までに
魔女
「魔女の私が今更そんな事を気にすると思う?ただデートの約束があるだけよ。」
死神
「……ヤリマンが。」
魔女
「焼き殺すわよ?」
狼男
「ま……まぁまぁ!落ち着こうか!」
そんな二人の言い合いに、ジョシュアがクスクスと笑いながらおつまみのナッツの殻を剥く。何も言えずにただじーっと二人を見つめてビールを飲むクリスの口に、剥いたナッツを当てた。
ミイラ男
「あ……さんきゅ。」
ドラキュラ
「くだらねぇけど面白いだろ俺のマブダチ。こいつらが一番仲良いんだ。」
ミイラ男
「うん、さっぱりしてて良いよね。リリとリーパーが昔付き合ってたのは驚きだけど。」
ドラキュラ
「俺もそれは知らなかった。」
殻を剥いたナッツを今度は自分の口に放った。ポリポリと食べるジョシュアに、クリスがジョッキの水滴を指でなぞりながら聞いた。
ミイラ男
「リーパーってやっぱり死神だから人の命取ったりするの?」
ドラキュラ
「お前怖いんだろ、あいつの事が(笑)」
ミイラ男
「いや、別にそういう訳じゃ……。」
魔女が不機嫌にバーを出て行くと、「んだ、あの女は!」とリーパーがイラつきながらビールをゴクゴクと一気に飲み干して乱暴にジョッキをテーブルに置いた。
死神
「それは俺の仕事じゃねぇよ。」
ミイラ男
「あ、聞こえてた?ごめん……」
死神
「謝んな、お前俺に気ぃ使い過ぎだよ。そんなにビビんなくったって俺はお前に何もしねぇよ。」
ドラキュラ
「いや、させねぇから!(怒)」
ミイラ男
「でもさっき、寿命縮められるって……」
狼男
「出来るけどやらないだけだよ。」
ミイラ男
「…………?」
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